「僕はこたつ記事は書けません」 「日本中学生新聞」記者、川中だいじさんが現場取材でしか見えないと感じているもの
新聞は部数を大幅に減らし、テレビを持たない若者が増え、ネットメディアも経営が困難だ。メディアの未来が危ぶまれる中、とびきり活きのいい「新聞」が話題になっている。
日本中学生新聞。その名の通り、中学生が取材し、中学生が書くメディアだ。
一人でこのメディアを運営するのは、現在は高校1年生になった大阪市在住の川中だいじさん(15)。選挙取材から始まって、大阪・関西万博取材、学校での生徒会活動など、これまでの歩みを綴った初の著書『こちら日本中学生新聞』(柏書房)を出版したばかりだ。
そんな川中さんに話を聞いた。
日本中学生新聞:note
日本中学生新聞:YouTube

川中だいじさん。着ているスーツは、森友問題で財務省の公文書改竄を強要され自殺した赤木俊夫さんのものを譲り受けた(撮影・岩永直子)
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小学生の頃から食卓で両親と政治の話
——取材する側と取材される側、どちらがいいですか?
どっちも楽しいです。
——普段はどんなメディアで情報収集しているのですか?
テレビ、新聞ですが、新聞は紙ではなく電子版で取っています。今は朝日と毎日だけで、読売も取りたいのですが、紙面を買わないと電子版を申し込めない。親父に読売を取りたいと言ったら、大阪に住んでいるものですから「あれはジャイアンツや。取ったらあかん」と言われました(笑)。
——やはりタイガースファンなんですね。じゃあリベラル系の新聞のみで。
でも、右系の雑誌「月刊Hanada」なども本屋で買って読んだりします。色々なメディアを見ています。
——政治に関心を持ち始めたのが小学校3年生の頃と書いていらっしゃる。ご両親が食卓で政治の話をする家庭で育ったそうですね。
特定のイデオロギーに偏っているわけではなく、食卓ではNHKをつけていることが多い家庭です。例えば小学校2年生の2018年の頃は森友学園問題(※1)や加計学園問題(※2)などの政治スキャンダルもありました。
※1 大阪府の国有地が学校法人「森友学園」に格安で払い下げられた問題。当時の安倍首相や昭恵夫人の関与が疑われた。財務省が公文書を改ざんしたことも問題になり、改ざんを強要された職員、赤木俊夫氏が自殺したことでも話題となった。
※2 学校法人「加計学園」による獣医学部新設をめぐり、学園理事長と長年の友人であった当時の安倍首相が「特別な便宜」を図ったと疑われた問題。
野党系で言えば、希望の党騒動(※)などがあったものですからそういう話をしていましたね。
※小池百合子都知事が衆議院議員選前に設立した新党「希望の党」に当時の民進党が合流する時、小池都知事が「リベラル系を排除する」と明言したことを受けて野党が分裂した騒動。
——同級生はそんな話をしない年頃ですよね。
我が家が政治のことをタブー視しなかったのは大きかったんじゃないかと思います。
重度障害者が立候補した2019年の参院選から政治に関心
——本格的に政治に関心を持ち始めたのが2019年の参院選ということですね。れいわ新選組が重度障害者の候補を出したことに関心を持って。
その前に、街の中に街宣車が走ったり、公園の前に掲示板が立ったり、自分が知っている街の風景が変わり、面白いなと思ったところから選挙に興味を持ち始めました。
選挙についてテレビや新聞、YouTubeをみていて、重度障害者の木村英子さんや舩後靖彦さんが立候補されるのは子供ながらにすごいなと思いました。
今まではいわば健常者の国会議員が障害者の問題を追及したり、あるいは無関心だったりしていた。そこで当事者の方が国会に入るのはすごいなと子供なりに思ったんです。
——私は医療や福祉の取材をしているので聞きたいのですが、障害のある人とこれまで直接付き合いがあったり、学校で出会ったりしたことはありますか?
直接の付き合いはあまりないです。だからこそ、重度障害者の立候補は自分の中ですごいと思ったのかもしれません。
——それまでALS(筋萎縮性側索硬化症※)など重度障害を持つ人にどんなイメージを持っていましたか?
※手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだん動かなくなっていく進行性の神経難病。治療法がまだ見つかっていないが、人工呼吸器や胃に開けた穴から栄養を補給する胃ろうなどを作って長く生きられるようになった。体が動かなくなっても感覚や内臓機能などは保たれる。
特段イメージもなかったです。そもそもALSというものを知らなかった。有名な科学者のスティーブン・ホーキングがALSと知って、そうなんだと思ったぐらいです。そういう人が当事者として乗り込むのがすごいなと思いました。
テレビや新聞でなく、現場で直接話を聞く意味
——そこで政治に関心を持って、テレビやメディアで見るだけではなく、現場に行き始めるのがさすがだなと思いました。メディアで見るのと現場で見るのは何が違いましたか?
直でその人の話を聞くと、その人の喋っている声や、目の奥にあるものだとか、周りの情景、周りの空気感を全て込みで感じることができると思うんですよね。

2024年3月9日、尾辻かな子、泉健太、辻󠄀元清美3氏に取材する川中だいじさん(※街頭演説後に取材、日本中学生新聞提供)
映像だけだと、声も均一に聞こえますし、目の奥にあるものがうっすらとしか見えない。空気なんて感じないわけです。直で話を聞くのは、その全てを三次元で感じることができるのが僕にとって大きいところかなと思います。
告示日の忙しいなか、取材に応じてくださったのはとてもありがたい。だけど、ぼくが質問をしている時に鼻で笑う仕草をしたのはなぜだろう。とても印象が悪かった。 取材後、すぐに永藤候補は支持者まわりに戻り、その様子を見ていると、子ども連れの有権者には子育て政策を説明するなど丁寧な対応をして喜ばれていた。
——小さい頃からスマホやiPadで検索したと書いていましたが、ネットは身近なものだったのですよね?
僕が生まれた頃にはTwitterもありましたからね。GoogleやYouTubeも身近にありました。
——でもネットを通じてではなくて、現場で選挙を見たいと思ったのはなぜなんでしょうね?
2019年の参院選の時は、あべのキューズモール前で亀石倫子候補の応援演説に辻󠄀元清美さんが来られて、たまたま買い物をしていてそこに居合わせて聞いたり、れいわ新選組から立候補した安冨歩さんの演説に母が行きたいと言って聞きに行ったりしたりしていました。
やっぱり現場に行かないとわからないことがあるし、逆に僕はこたつ記事(※)は書けないんですよね。
※こたつに入りながら書けるように、検索情報などだけで書く記事。
こたつ記事を書けないのは、もちろん技術がないからです。現場に行って取材をした方がある意味書きやすい。逆に、書くよりも現場に行く方が楽しいです。取材に行く方が楽しいので、書きたくないなと思いながら頑張って書いた本です(笑)。
記者会見も門前払いされる壁を最初に経験
——そうやって現場に行くうちにメディアを通じてでは見えなかったものが見えるようになったと思います。最初の発見は?
2023年5月のG7広島サミットで、広島選出の議員であり、サミットの議長でもあった当時の岸田文雄首相に会見で「核兵器禁止条約に署名・批准しないのですか?」と直接聞きたいと思ったんです。
報道機関登録申請で記者としての実績を示さなければならず、日本中学生新聞創刊のきっかけにもなりました。

日本中学生新聞創刊号。題字は書道が得意な祖母に書いてもらった(日本中学生新聞提供)
ところが、G7センターに記者証申請をしようと問い合わせると、「学生の受付はしていない」と門前払いでした。そこで外務省にも電話をして、そのやり取りを本でも書いていますが、大人の世界は残酷なんだなという驚きがありました。
もちろん実績がなかったのは事実ですが、あの時の対応の酷さは執筆しながらも腹が立つものでした。それと同時に酷い言い方をされたからこそ、これから頑張っていかなければいけないと痛感したところもあります。
——会見から排除されてしまう問題ですね。その後、記者クラブともそんなやりとりがありましたが、そういう壁に理不尽さを感じたのですね。
ある意味、初めにストレートに取材できず、こういう理不尽な壁があったからこそ今があるのではないかとも思います。センターだけで諦めず、親組織である外務省ともやりとりしたのは自分でも頑張ったなと思います。結構諦めが悪い方なのかもしれませんね。
「世界が僕の味方をしてくれる」視野が広がる喜び
——まさに記者魂を感じました。学校でも、政治に関心を持ち始めて友達と語っていた時に、先生に「学校で政治の話はするな」と止められましたね。そこで腹を立てるだけで終わらせず、反論する根拠はないかと、自分で子どもの権利条約を探し当てるところまでいくのがすごいと思いました。あれは一人で探したんですか?
一人で探しましたね。

重版も決まった『こちら日本中学生新聞』(柏書房)
——検索ワードに「日本国憲法 子どもの政治参加 意見」などを入れたと書いていました。なぜ憲法という言葉を思いついたのですか?
政治に興味を持ち始めると、何らかの形で憲法と出会うんですよね。憲法の三大原則として、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」があります。政治の話をするなというのは、基本的人権を侵害する行為なのではないかと思ったんです。だから検索ワードに憲法を入れ込みました。
——すると、子どもの権利条約にたどり着いたのですね。
そうですね。
——私はこれがすごいと思いました。自分で壁を乗り越えるために情報探しをした。見つけた時、どう思いましたか?
あの時は嬉しかったですね。子どもの権利条約って色々な国が約束して、国連でもそれについての会議があるぐらいのものですから、世界が自分の味方をしてくれたと思いました。
子どもであっても自分に関わることについて意見を述べ、その意見が尊重されるべきだと世界中の国が約束をしている、という内容だった。日本もこの条約に署名・批准している。政治の話をしてはいけない、と繰り返し大人から叱られてきたぼくにとって、この条文は「子どもにだって声をあげる権利がある」とはっきりと示し、応援してくれているものだった。だからこの条文を見つけた時は、「やった!世界がぼくを守ってくれる!」本気でそう思った。
——あそこは感動しました。しかもその条文を持っていって先生に反論しにいくんですよね。
もちろん反論するための材料はないかと探したので、反論しないと意味がない。それでも学校で政治の話はしてはいけませんと言われましたけれども、今思えば、あそこでもう少し反論すればよかったなと思います。
学校全体の人権意識の低さが、先生の「政治の話をするな」という発言にも現れていると思います。改めて書きながらも、本ができて改めて読んだ後でもそう思いました。
——教えられたものをただ受け取るだけでなく、自分で探して世界を広げていく力を持ち始めているのがすごいなと思いました。「世界が自分の味方をしてくれる」って印象的な言葉ですが、取材によって学校や大阪だけでなく、自分の世界が広がっていく感覚はありましたか?
その時にそう思ったかは不明確ですが、そう言われれば確かに世界は広がっていってますよね。初めは憲法という日本国だけのもので調べていたのが、世界に共通するものが見つかったわけですから。そう考えると、世界が味方をしてくれるという喜びは、自分の中の視野が広がった喜びも兼ねていたのかもしれないです。
政治の話をするなということ以外でも、理不尽に怒られたことについてはおかしいじゃないかと思ったら、何でもかんでも鵜呑みにしないのが僕のいいところです。でも学校の先生たちからは嫌がられるポイントなのかもしれません。でもそれが今の活動にも響いている感じがします。
(続く)
【川中だいじ(かわなか・だいじ)】「日本中学生新聞」記者
2010年、大阪市生まれ。小学3年生の時に政治に関心を持ち、2023年に「日本中学生新聞」を創刊。「誰にも遠慮せずに書きたいことを書く」をモットーに、選挙をはじめ大阪・関西万博、IRカジノ、森友学園問題などを取材し、SNSやYouTubeで発信している。雑誌やウェブメディアへの寄稿も多数。2025年春より、テレビ大阪の公式YouTubeチャンネル「大阪NEWS【テレビ大阪ニュース】内の番組で、「中学生記者・だいじの対談クラブ」で聞き手を務めた。『こちら日本中学生新聞』(柏書房)が初の著書となる。
医療記者の岩永直子が吟味・取材した情報を深掘りしてお届けします。サポートメンバーのご支援のおかげで多くの記事を無料で公開できています。品質や頻度を保つため、サポートいただける方はぜひ下記ボタンから月額のサポートメンバーをご検討ください。
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