「民主主義は完成形がないから、死ぬまで追い続ける」 高校生になった「日本中学生新聞」記者がこれから取材したいこと
初めての著書『こちら日本中学生新聞』(柏書房)を出版したばかりの15歳のジャーナリスト、川中だいじさん。
自身の新聞やこの本について「中学生が作った民主的読みものである」と紹介している。
川中さんが考える民主主義とはどんなものなのだろうか?
日本中学生新聞:note
日本中学生新聞:YouTube

自身の著書を持つ川中だいじさん
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生徒会活動で経験した民主主義の難しさ
——今回の本では自身の生徒会活動のルポも書いています。選挙をして、当選したものの、結局、先生や先輩が口出しして自分のやりたいことがやれず、先生の言いなりになってしまった経験も書いています。その時はどう思いました?
生徒会の中で、民主主義は難しいと痛感しましたが、あれがあったからこそ学びがあったのは事実です。
もちろん僕も、きちんと学校のことを知らない状態で生徒会長をやって、生徒の意見を聞いて学校運営をしていきたいという意思はありました。その前からいる先輩たちが一緒にやっていけたらいいなと思っていたのですけれども、なかなか上手いことはいかず、先輩たちの意見にも挟まれてしまった。
あの時にしっかりとものを言わなかった僕も悪い。だから今度はちゃんと言っていかないといけないんだなと思います。
でも実績は、ちゃんと作りましたから。売店のポテト増量を実現しましたしね。
——(笑)。可愛らしい実績ですね。でも、再選もされて。
その後、2度落選しました。初めに当選した時は、田中角栄の演説を聞いて、それを勉強して挑んだわけですけど、次に落選した選挙は土下座をしたんですよね。民主党に政権交代をする時に、片山さつき氏が落選しそうで土下座した姿を僕はなぜか思い出して、真似したのですが、落選しました。
でも、その1年後当選した時は、自分の思っている改革は道半ばであるということで選挙運動をしていった。でもこの時も、いっぱいいろんな壁はありました。
1度落選してしまうと嫌われものですから、「お前のことは支持していない」とか、「お前のことは嫌いだ」とか、いっぱいそういう声がありました。でも、田中角栄が若い頃の石破茂に全部の家をピンポンして回れと言った通りに、1人1人の生徒に食堂やクラスで握手をして、いろんな話を聞いて、それを1年間続けてきた成果はあったんじゃないかなと思いました。
選挙規約では、握手はなるべくお控えくださいと書かれていたのですが、お控えくださいということは禁止ではない。手袋をつけて握手だったら衛生上大丈夫ですよねと思って、選挙でよく見る白い手袋をわざわざホームセンターで買って握手に回るとか色々やりました。
選挙取材をずっと続けているから、いろんな手がわかるんです。抜け道を考えていくのが選挙の醍醐味。僕が再選した選挙は6時間目に行われたのですが、5時間目まで僕は劣勢だったんですよ。
相手の候補者は女子の中でもかなりの地位を持っていて、簡単に言えば、陽キャな人気の女子なんですよ。なので、僕は劣勢だと言われていたんです。しかも彼女は現職の後継候補ですから。僕はあまり先輩からよく思われてないので、それで後援会のみんなと考えて講演会のみんなと考えたのがスマホの自由化を掲げて打ち出した「ナイフォーン14作戦」でした。
「ナイフォーン14」というのはプラスチック板と紙で作られたアイフォーン14のレプリカだ。アイフォーンのカバーに入れることによって、遠くから見たら完全にスマホに見える。「皆さんスマホの自由化をしようじゃありませんか」。そう言いながらポケットからナイフォーン14を取り出した。これを見た先生が本物のスマホだと勘違いをして慌て、注意をしようと近づいてきたタイミングで「安心してください。ナイフォーンです」と言いながら、偽物だと分かるように画面側を向けると生徒だけでなく先生たちも大爆笑、いい雰囲気の中で演説を続けた。
あれは、楽しかったですね。
学校を民主化するための3つの提言
——今回の本では学校を民主化するための3つの提言(「がっこう民主化構想」「主権者教育の再考」「道徳教育から人権教育へ」をされていますね。先生の評価や内申点など、生徒が自由に意見を言おうとしても萎縮したり忖度したりするような仕組みがあります。ものすごく重要だと思いますが、これは自分のそれまでの取材などから培われた考えなのですか?
「がっこう民主化構想」は、先日家の掃除をしていたら、「学校三権分立案」というものが出てきて、それが元祖たるものなんです。
当時、僕は学級委員長選挙に立候補した時のチラシにも、「平等を作る、だから生徒と先生が同じ校則を担うようにする」と書いていました。今はそれではダメだなと思っているんです。
教師たちとも話してみると教師たちのルールがあるみたいで、もちろんそれは教師自身が決めるべきものです。けれども、今の校則は、教師たちは守らないのに教師が決めている。
だから、校則に関して、自分たちが関わることができるようにする体制をきちんと整えることこそ重要だと思って考えたのが、このがっこう民主化構想です。
この本の最後のゲラの段階まで詳細を整えました。生徒の声だけを採用するのも違う。生徒の声だけになると、生徒もまだ考え方が未熟なところがありますから、私利私欲に走ってしまうところもある。
だから客観的な目で見るために外部の有識者を入れて考えてもらったり、最終的な議案の採決には先生たちの票も入れたりする。生徒と先生は同一の人数です。最終決定は生徒投票で決める、
生徒投票の期間は1週間か10日ぐらい取ってもいいと思うんです。総合の授業などで、なぜ改正が必要かまとめた資料をしっかりと読んで考えてきてもらう。何ならそれを宿題にしてしっかりと考えてもらいます。自分たちの問題ですからね。そして賛成か反対か投票できるようにすることが大切だと僕は思います。
「忖度ロボット人間製造所」「おかませ民主主義の訓練場」変えられるか?
——他に掲げている「主権者教育の再考」にしても、「人権教育」にしても、自分の頭で考えて、自分で決めていくことが学校でものすごくおろそかにされていますね。その結果、成人しても選挙にも行かないし、あまり深く考えずに投票してしまう。そんな今の学校教育について、「忖度ロボット人間製造所」「おかませ民主主義の訓練場」と厳しい言葉で批判しています。これはご自分で考えたのですか?
そうです。僕は議会制民主主義でおまかせ民主主義になってしまう現実はありますが、それをアップデートしていかなければいけないとも思います。
学校教育の目的とは何か。教育基本法第一条(教育の目的)では「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない」と定められている。しかし現状はこれに反し、先生からの指示に「わかりました」と従う上位下達の構造が好まれ、常に「らしく」が求められることから、学校は「同調圧力に屈して、上からの命令には従う忖度ロボット人間製造所」、さらには「おまかせ民主主義の訓練場」と化し、ぼくたち生徒が主権者としていることは非常に難しい場所となっている。
民主主義の取材で、「国民発議制度(※)」を提唱しているジャーナリスト今井一さんに話を聞いたのですが、今井さんの言うように、一人ひとりの主権者の意識を、「選挙の時だけ主権者」から、「365日主権者」という意識に変えていかなければならないと思います。
※有権者が一定数の署名を集めることで、法律の制定や改廃を国に提案し、必要に応じて国民投票で賛否を問うことを可能にしようとする構想。
そのために教育は大切なので、この3つを挙げています。学校の中で校則さえ変えられる成功体験がないのに、大人になって法律を変えることができるなんて思えないでしょう。
だから、まずは校則は自分たちの力で変えられるんだと成功体験を持つ。そうすれば、選挙でも、自分たちが応援できるような政治家を選んで、その1票が大切な1票になるんだということを学ぶ。大切な1票だと思えるようになる。
今までそんな過程を疎かにしてきたのが教育の場です。自分たちの身近な社会問題を議題にして批判的思考を持って議論することが、18歳になって選挙権を持った時に必ず生きてくるとこの本にも書きました。
『火垂るの墓』などを作った映画監督の高畑勲さんの書いたブックレット『君が戦争を欲しないならば』(岩波書店)を読んだことがあります。
高畑さんが中学生の頃、クラスで「再軍備は是か非か」を議論したそうです。「戸締り論」というわかりやすいものに皆が納得し、再軍備派が多数になりました。高畑さんもその意見に流され再軍備に賛成したそうです。でも一人だけ、再軍備反対とみんなとは違う意見を出した生徒がいて、父親が社会党の市議会議員だった。その後、10 年くらい前にその人に会い、当時のことを話すと彼は覚えていなかったというオチがありました。
みんなが一つの意見に流れる中、一人だけでも「自分は違う」と意見が言える環境って素晴らしいじゃないですか。そういう場が当時はあったかもしれませんが、今は全然ない。そんな風に自分の意見が言える環境を整えていけたらいいなと思います。
メディア、記者の弱体化どう見る?
——批判的吟味をしながら議論するには情報が大事です。それを我々記者は取材して届ける立場にありますよね。その記者やメディアが今、弱体化していると言われていますが、それについてはどう思いますか?
部数はどんどん減っていて弱体化しているのは事実だと思うのですが、それでもなお、影響力は大いにあると思うんですよ。
学校の授業で信ぴょう性のある情報は何ですか?と聞かれたら、テレビ、新聞、プラス雑誌と言われるぐらいですから、ある程度信頼性はある。
だから買ってくれる人が少なくなって経営は大変だと思うのですが、自信を持ってほしいなと思います。信頼されているメディアだということは忘れずに取材してほしいと思います。
——ご自分が現場に取材に行ったり、囲み取材や記者会見に出られて、記者の質問力が落ちてるなと思うことはありませんか?
囲み取材の時は、代表がすでに質問したのに、自分の社の質問として書きたいからという理由で同じ質問をすることがあるんですよ。時間が限られて違」る囲み取材で、そういうのはどうなのかなと思うことはありますね。
僕は大阪府の記者会見は入ったことがなくて、司法記者クラブの会見は入ったことがあるのですが、記者クラブに入ったことがないので何とも言えないです。でもYouTubeなどで中継を見ている限りでは、それなりに質問しているんじゃないかなと思いますけれどもね。上から目線で言ってしまいましたけれども(笑)。
——本の中では色々な記者の知り合いも出てきますが、記者の追及する力が弱くなっているとは感じていないのですね。
でも、やはり兵庫県知事選挙は、メディアの存在意義が問われる問題だったと思います。今まで齋藤元彦知事のことを、百条委員会をはじめとして、不必要な批判までしてきたと思うんです。

兵庫県知事選で斎藤元彦候補に取材する川中だいじさん(日本中学生新聞提供)
例えばテレビで知事の瞬きの回数とかを報じたりしたのは、後々批判される材料になるに決まっています。ああいう不必要な批判に走ってしまうのは、僕は危険だなと思っています。
それにもかかわらず、選挙期間中はファクトチェックを全然できていなかったじゃないですか。公平性を重んじるという理由で、特定の候補者のファクトチェックをするのを避けていました。メディアにおける公平性とはいったい何なのか、改めて議論されるべきものだと思います。
選挙があることすら実感していない若者がいるみたいですが、こういう報道の仕方をしていたらそうなるだろうと思いますし、SNSのデマに流されてしまうよなと思います。
今問われているのは、SNSの情報が強くなってる中で、メディアは一体何ができるのかということです。自信をなくすのではなく、どうやったら張り合えるのか徹底的に議論をすることこそが、テレビや新聞、雑誌の役割じゃないかなと思いますね。
SNSでの誹謗中傷、「ありがたいと思えてきた」
——自身も有名人になって、SNSで誹謗中傷などを投げつけられることも増えたと書かれています。実際、大変な思いをされているのですか?
2時間ぐらい僕のことを誹謗中傷するような動画があって、その時はかなり病んだこともありました。
でも先日、中学を卒業しましたというツイートをしたんです。そうしたら1万ぐらいいいねがついて、そうするとネトウヨコメントもついてくるんです。なぜ「卒業しました」のツイートについてくるのかと思うのですが、よくよく考えると、その人たちも短くても1〜2分、僕のために誹謗中傷を書くために時間を使ってくれている。そういう考え方をすれば、ありがたいなと思えてくるんです。
——大人の受け止め方ですね。
僕はそういう人たちがいるからこそ、シェアされるところもありますから。それによって本の購入も1冊、2冊と増えていくのかなと思うと、ありがたいなと思います。でも一番傷ついているのは母かもしれないですね。
——脅迫めいたものなどはないですか?
あります。京都の河原でどうにかされろとか、親の虐待だと言われることもあります。それは子供に対する差別心なのかなと思いますね、
日本の子供への考え方は後進国だと思うんです。子どもの権利条約に批准してもう32年になりますけれども、口だけです。日本は国連から、子どもの意見を尊重していないなどとして、是正するよう勧告を受けているんです。
だから、子供がきちんと1人の人格者であることをしっかりと大人の間でも認知する。そして、子供の間でも、自分たちは1人の人格者で、人権も持っていて、自分の意見を言うことができる。
教師と生徒は主従関係だと思っている先生もいるし、生徒もそう思ってしまっている現実がある。そこは改善しないといけない。子供も人間なんだから、すべての国民は法の下に平等と憲法第14条にも書いています。差別されてはいけない。
それがしっかりと保障されているのに、なぜそこで主従関係ができるのかということです。
憲法を見ても対等な立場なのに、なぜそこに上下関係を生んでしまう学校環境になってしまうのか。それはしっかりと考え直さないといけないなと思います。
帝国主義が幅をきかせる世界で、武器にしたい日本の民主主義
——今、それこそアメリカのイラン攻撃など、世界で戦争が起きるんじゃないかという非常に危険な状況になっていますね。その情勢や日本に与える影響に関心はありますか?
関心はありますね。僕がまだそのあたりの歴史の背景をちゃんと知らないので、生半可なことは言えないと思って、言うことは控えてるんですけれども、いかなる紛争もあってはならないものだと思っています。
日本とイランは長年の歴史がある友好国ですし、アメリカとは同盟国です。その中で、日本の立ち位置を考えなければいけないのに、日米首脳会談で高市早苗首相は、イランを非難して、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」と発言しました。
僕は、はっきり言って驚きましたね。世界の平和と繁栄を創造する一人がドナルドだと思っている、そのために一緒に頑張っていきましょう、ぐらいならまだわかる。
しかし、あれは、アメリカの帝国主義を復権させるような発言でもあると思うんですよ。
世界の平和と繁栄は、世界の全体の為政者もそうですし、プライムミニスターやプレジデントと呼ばれる人たちが代表して、貧富の差関係なしに、世界中の1人ひとりが、戦争を起こさせない、いかなる戦争もダメなんだという意識を持つことで成り立つものだと思います。
世界中の人たちが共に助け合う共生社会を作るという意識を持つということですから、為政者が一方的に俺は平和がいいんだと主張しても生まれないものだと思っています。
だから、みんなが平和で共に暮らせる社会を作っていきましょう、一緒にそれを頑張っていきましょうというのが本来の筋だと思います。
——世界の平和と繁栄のために一緒に頑張る一人として、ご自身も取材、執筆をしているわけですね。
そうです。日本は憲法9条があって、平和主義のもとに戦後80年間やり続けてきたわけです。僕は憲法に関しては、護憲ありきでも、改憲ありきでもなく、時代に合った形で人権や平和主義もアップデートしていった方がいいんじゃないかと思う立場です。それだからこそ、1人ひとりの意識は大切です。
——だから、民主主義を国内、自分の身の周りから考える取材をしている。
民主主義という意識こそが本当に大切だと思います。今は逆に帝国主義と民主主義の戦いで、帝国主義の方が強くなってきてると思います。大国でいえば、トランプ大統領も、プーチン大老良も、習近平国家主席も、どの大国も帝国主義的になってしまっている。
だからこそ、まだ民主主義が守られ、GDPが世界4位で一定程度世界にも影響力があり、かなり強いパスポートがあっていろんな国と仲良くしている日本は、それを武器にしていかないといけない。そんな時代になってきてるんじゃないかなと思いますね。
これからもより良い民主主義とは何か考え続ける
——4月に高校に進学したのですよね。今度は「日本高校生新聞」になるのですか?
いろいろ考えたのですが、検索ワードに引っ掛かることが重要なので、日本中学生新聞のままで続けていきます。中学生から始めた新聞ということでやっていこうと思います。
——今後はどういうテーマを取材したいと思っていますか?
やはり教育に関しては改めて徹底的に取材したいです。義務教育課程からも外れますし、教育についてはより関心を持って調べていきたい。2030年に開業を控えた大阪IRの問題も引き続き取材したいと思います。
あとは民主主義に関してです。民主主義は答えがないものだと思うので、たぶん死ぬまで追い求めていくものだと思いますし、考えていかないといけないことだなと思います。より良い民主主義とは何なのか。完成形はないし、アップデートしていくものだと思うので、考えていきたいなと思います。
——将来の職業はジャーナリストですか?
まだ決まっていないですけれど、ジャーナリストか政治家になりたいと思っています。
【川中だいじ(かわなか・だいじ)】「日本中学生新聞」記者
2010年、大阪市生まれ。小学3年生の時に政治に関心を持ち、2023年に「日本中学生新聞」を創刊。「誰にも遠慮せずに書きたいことを書く」をモットーに、選挙をはじめ大阪・関西万博、IRカジノ、森友学園問題などを取材し、SNSやYouTubeで発信している。雑誌やウェブメディアへの寄稿も多数。2025年春より、テレビ大阪の公式YouTubeチャンネル「大阪NEWS【テレビ大阪ニュース】内の番組で、「中学生記者・だいじの対談クラブ」で聞き手を務めた。『こちら日本中学生新聞』(柏書房)が初の著書となる。
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