「24時間介助を受けて、地域で生活することは贅沢でもなんでもない」 介護保障ネットが14周年シンポを10月に開催
障害があっても街の中で自立して暮らすことを当たり前にしたい——。
そんな願いを持って、弁護士と障害当事者が24時間の公的介護を獲得するために支援する「介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット(介護保障ネット)」が設立14周年を迎えた。
10月24日には、誰でも無料で参加できる14周年オンラインシンポジウム「”前例がない”を乗り越える介護保障の実践〜何を根拠に、どう交渉し、どう実現してきたのか」を開催する。
シンポジウムでは50年以上、沖縄県の病院で生活していた重度障害者の女性が、介護保障ネットの支援を受けて地域での自立生活を実現した事例も報告される。
シンポジウムを前に、介護保障ネットの支援を受けて24時間介護を獲得した障害当事者で、介護保障ネット共同代表の詩人、岩崎航さん(50)にインタビューした。

岩崎航さん
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まだ残る自治体間の格差
——岩崎さんが介護保障ネットの共同代表に就任してどれぐらいになりますか?
1年ぐらい経ちました。
——中に入ってみたこの1年で改めて気づいたことは?
この1年、介護保障ネット内の会議に出席したり、日々のやり取りを重ねたりしてきました。私自身、24時間の公的介護を得るために、介護保障ネットに相談し、弁護士さんたちに行政との交渉でお世話になった経験があります。共同代表になって、支援を受けるだけではなく、介護保障についてさまざまな人が情報を獲得できるように支援していく立場になりました。
そんな活動の中、さまざまな課題や問題点が見えてきました。私自身は、一時、十分な時間の介護支給を行政に拒否されたことはありましたが、それほど長期化することなく、しっかり交渉することで乗り切ることができました。他の人に比べれば、短期間で解決できたわけです。
でも、まださまざまな考えの自治体があるので、介護支給時間の希望が全国どこにいてもスムーズに等しく通るわけではありません。どこの地域でも、適切な介護支給が得られていくようにすることが、大切ではないかと思いましたね。
——やはり他の地域の事例を見ていると、交渉が長期化しているところや、申請を突っぱねる自治体もあるのですか?地域による格差は今もありますか?
そうですね。自治体によっては、すぐに介護支給が決まらないこともあります。介護保障ネットは、こうした案件に一つ一つ丁寧に対応することで乗り切っており、地道に成果を積み上げている状況です。
——情報を獲得できるように支援する立場になったとおっしゃいましたが、それは障害当事者に向けて活動しているのでしょうか?それとも理解のない自治体に理解を深めてもらう活動をしているのでしょうか?
当事者にこんな選択肢があることを知らせ、自立生活の事例が積み上がれば、行政の人にも障害当事者が生きる現場にはそういうニーズがあることがわかってもらえます。それによって、行政の理解が深まることにもつながり、障害のある人の生活を支える仕事がきちんとなされるようになる。行政に対する働きかけも、当事者に対する働きかけも、同時に行なっていることになると思います。
地域で24時間介護を受けて暮らす選択肢があることが知られていない
——課題や問題点に気づいたということでしたが、一番の課題は?
なんといっても、24時間介護を受けて地域で自立生活をしていくことができること自体が知られていません。重度の障害があっても、公的な介助を受けて生きていく道があること自体、知らない障害当事者や家族、医療介護の支援者が多いです。
日本の制度の中で、地域での自立生活が保障されていることがわかると、自分らしく生きていける道筋ができます。だからまずはこういう情報がしっかり行き渡るようにしなければいけません。なんでもまずは知ることが大事だと思います。
——まさに10月24日のシンポジウムは、「こうやって地域で暮らす選択肢もあるよ。こういう手続きを経て、自立生活に踏み出す人もいるよ」と知らしめるイベントですね。
そうですね。
——今回、50年以上病院で暮らし、街中での生活に憧れて支援を受けて実現した60代の女性の事例報告を予定しています。この方は11歳から入院し、中学生ぐらいから地域での暮らしを考えていたようですが、実現したのは60代になってからでした。この話を聞いてどう思いましたか?
思いを持ち続けて、実現されたその意志と勇気に感動します。時代による困難もあったと思うのですが、もし病院から地域に出て暮らしたいという希望があるならば、早いうちに環境を整えて、希望を叶えていくことがあればより良かったのかなと思います。どんなに歳を重ねても、人間として自分らしく暮らしていきたいという気持ちは消えないと思うんです。
だからそういう思いを自分の中に見つけた時に、支援者が関わっていき、一緒に実現する道筋ができればと思います。そして本人の希望を叶えていく。そんな方が増えていくといいなと思います。
——シンポジウムで実現までの詳しい道のりを伺うのが楽しみです。航さんのお兄様もそうですが、筋ジストロフィーの方が病院で暮らすのが当たり前だった時代がありますね。国立病院の結核病棟が役割を終え、筋ジストロフィーの方の長期療養の場所に変更された。今もたくさんの方が病院で生活しているのだと思います。でも特定の難病の人は病院で暮らすのが当たり前、というのも考えてみれば当たり前と思ってはいけないかもしれませんね。
病状や障害によっては、病院で高度な医療を継続的に受けなければ、生きることができない人もいます。そういう人が置き去りにされないためにも、病院での療養を生活を支えていく場としても充実させて、自分らしく、精一杯できることをやれる環境に整えていくことがとても大切です。
一方で、必ずしも常時、病院内での高度な医療がなくても、訪問診療や看護、医療的ケアや重度障害のケアができるヘルパーの支援があれば、地域の自宅で、病気や障害と付き合いながら、安全を維持しながら生きていける人もいます。そうした人に、病院での暮らししか選択肢が示せないでいることは問題です。
希望する人は地域で生活をできるようにするのも大事だし、そういう暮らしが難しい人は病院でも安心して自分らしく生きられる生活環境を両輪で作っていくことが大切だと思います。
生活が安定することで、自分らしい人生や将来の希望を考えることができる
——今回、沖縄の事例報告と共に、岩崎さんがご自身の生活を動画で見せるのが目玉の一つです。ヘルパーさんの介助を受けながら、日々暮らしている様子をお姉さんが撮影、編集してくれたそうですね。
そうなんです。協力してもらいました。
——どういう姿を撮っているのですか?
日常の中で、体を拭いたり、パソコンで色々と作業したりする姿を撮っています。こうやって自宅で生活できるのだよ、ということを端的に伝えられたらと思いまして。

ヘルパーさんの介助を受ける岩崎さん
——そんな生活の中で創った詩も披露していますね。言葉でだけでなく、実際に目で見て地域で介助を受けて、自分らしく生きるのはこんなイメージなんだと知らない人にわかってもらおうという試みですね。
そうですね。
——改めて自分の生活を撮ってみて、何か気づくことはありましたか?
いつも介助を受けて暮らしているのですが、人に撮られた映像を改めて見ると、自分は体が痛みやすい特徴がありますので、ヘルパーさんから丁寧に介助してもらっているなと感じます。時間をかけて丁寧な介助を受けることで、私の穏やかな日常が成り立っている。
生活が安定していないと、心を安定させようとしてもなかなか難しいと思うのですね。日々の生活がままならないと、その心配や不安一色に生活が覆われてしまって、自分のやりたいことを考えたり、自分の暮らしを将来どうして生きたいと考えることもなかなかできなくなる。
私で言えば、私にとっては五行詩を書くことも自分らしく生きることの一つですが、自分らしく人生を歩もうという思いは、生活が脅かされている状況ではなかなか湧いてこない。むしろそんな気持ちが湧くのを阻害してしまうことになります。
そういう意味でも、適切な介護時間や支援が受けられる環境は重要で、それさえあれば、病気や障害があっても、生活の穏やかさや人生を充実させることができると思うんですね。そういうことがもっと多くの人に伝わって、実現に結びつけばと願っています。
24時間介護を求めることは贅沢ではない、当然の権利
——では最後に、このシンポジウムに参加してもらいたい人に対するメッセージをお願いします。
まず、24時間の介助を受けて地域で暮らしていきたい希望があるのに、なかなかできないでいる当事者の方は、あきらめないでほしいです。その実現に向けて支援してくれる人は介護保障ネットに限らずたくさんいますので、そういう人たちと繋がりながら実現に向けて動いてほしい。

参加を呼びかける岩崎航さん。24時間の介護を受けて、自宅で創作活動などに勤しんでいる
24時間介護は、重度の障害がある方が自分らしく人生を生きるのに欠かせないものですから、不安はあるかもしれませんが、求めてほしい。
介助を受けることは贅沢でもなんでもなく、当然に求めていい権利です。顔を上げて、周りの支援者に堂々と助けを求め、一緒に一歩を踏み出してもらいたいと思います。
その一助となるシンポジウムですから、自立生活のためのきっかけ、入り口にしてもらえたらと思います。
【岩崎さんの詩】
どのような暮らしを
望むのか
つくり生きるのか
決めるのに
うつむかないでよい
介護ベッドの上で
毎日を生きる生活の人に
絶えずもっとも必要なのは
「やあ こんにちは」って
訪ねてくる
医師であり、看護師であり
ヘルパーであり
友だちであり、恋人であり
家族であり
暮らしの時間をともにする人だ
一人なのだが
立つしかないのだが
ともに
傍らにいて
生きていくことができるんだ
【岩崎航(いわさき・わたる)】詩人、介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット共同代表
詩人。1976年、仙台市生まれ。本名は岩崎稔。3歳で筋ジストロフィーを発症する。現在は胃ろうからの経管栄養と人工呼吸器を使い、在宅医療や介護のサポートを得て自宅で暮らす。2004年から五行歌を書く。2013年に詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』、2015年にエッセイ集『日付の大きいカレンダー』、2018年に兄・岩崎健一と共著の画詩集『いのちの花、希望のうた』、2021年に詩集『震えたのは』(いずれもナナロク社)を刊行。2016年NHK「ETV特集」で創作の日々がドキュメンタリー「生き抜くという旗印 詩人・岩崎航の日々」として全国放送される。同年7月から医療情報サイト「ヨミドクター」に自身の自立生活実現への過程を綴ったコラム『岩崎航の航海日誌』(全10回)として連載。以降、病と生きる障害当事者として社会への発信を続けている。2025年7月に介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット(介護保障ネット)の共同代表に就任。他、メディアへの寄稿、対談、講演、朗読会などを行う。
【14周年オンラインシンポジウム「”前例がない”を乗り越える介護保障の実践〜何を根拠に、どう交渉し、どう実現してきたのか」】
参加費は無料で誰でも参加可能。先着500人。2026年10月24日(土)午後1時30分~4時 視聴希望される方は、ウェビナー参加登録が必要。または以下のチラシのQRコードから参加登録が必要。

医療記者の岩永直子が吟味・取材した情報を深掘りしてお届けします。サポートメンバーのご支援のおかげで多くの記事を無料で公開できています。品質や頻度を保つため、サポートいただける方はぜひ下記ボタンから月額のサポートメンバーをご検討ください。
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