SNSにハマって時間やお金、健康を失ったのは利用者のせい? 海外で問われ始めているプラットフォームの法的責任
InstagramやYouTubeなどのSNSは、今や現代人の日常生活になくてはならない存在だ。
だが、延々と見続けて時間を溶かし、投げ銭に多額を費やし、インフルエンサーに影響されて摂食障害になる——そんなSNS依存の悪影響で苦しむ利用者が増えている。
アメリカでは、プラットフォーム側の責任を認める判決や決定が相次ぎ、巨額の賠償金や設計の変更が命じられている。
プラットフォーム企業の責任を問う訴訟を日本でも検討している「一般社団法人LEDGE」のメンバーでニューヨーク州弁護士の池田クラリスさんにインタビューした。

池田クラリスさん
まず注目されたのは、SNSで出回る内容への批判
——アメリカでプラットフォームの責任が問われた訴訟の評決や和解が続々と出ています。海外、特にアメリカでSNSプラットフォームの責任について言われ始めたのはいつ頃なのでしょうか?また何がきっかけだったのでしょうか?
プラットフォーム側の設計の責任について、訴訟で問い始めたのはアメリカが最初です。EUでは子供の個人情報保護という観点からは色々と議論されてきたのですが、その根源となっているのはアメリカで起こった様々な動きです。
特に子供への害について、プラットフォームの責任が問われ始めたのは2021年です。フランシス・ホーガンという元Facebookの社員が、内部文書を出して告発したのが大きな引き金となりました。これについては後で詳しくお話しします。
その告発の前からも二つの批判の流れがありました。
一つ目はSNSが社会にものすごく大きな影響力を及ぼすことへの批判です。これについては、SNSで拡散されている内容についての批判と、SNSがユーザーの様々なデータを集めているという批判に分けられます。
まず前者については、2016年のアメリカの大統領選挙の際に、SNSで偽情報が拡散され、主にロシアが選挙に介入していたことが問題になりました。
新型コロナウイルスが流行し始めた2020年頃からは、SNSで誤情報が拡散されることも問題となりました。
——確かにコロナ禍では「インフォデミック」(誤情報や偽情報が出回って社会に混乱を巻き起こすこと)が問題になりましたね。
そうですね。その時は、主にSNSにはどのような情報があり、どのような情報を拡散し、どのような情報を削除すべきかという議論でした。
でも、そこから今回の訴訟に結びつく重要な気づきが生まれました。つまり、問題は悪い投稿そのものだけではない。SNSのアルゴリズムがそれを増幅することにも問題があると、気づいたのです。
——アルゴリズムによる増幅については、どういうことを例に批判されていたのですか?
特に怒りやヘイトを掻き立てる投稿が大きな反響を呼んで、SNSのアルゴリズムがそれをさらに拡散し、火をつけているというような批判です。
——例えばコロナだと、「元のウイルスは中国が生物兵器として作ったものが世界に広められた」という噂がSNSで増幅され、中国人へのヘイトが掻き立てられもしました。そういうことですか?
そうですね。
——ワクチンでもワクチンに反対する人から、「接種すれば将来妊娠しづらくなる」などの偽情報が発信され、それがSNSで拡散されて接種率にも影響しました。
まさにそういう例ですね。
SNS利用者から無断でデータを収集
もう一つは利用者からデータがたくさん収集されているという批判です。例えば、2018年に明るみに出た「ケンブリッジ・アナリティカ事件(※)」が大きな問題となりました。
※イギリスの政治コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が、Facebookの利用者約8700万人分以上の個人データを無断で収集し、アメリカの大統領選挙や英国のEU離脱国民投票で有権者の操作に利用したとされる事件。
無断で取得されたデータが、政治的キャンペーンのターゲティング(効果的に宣伝するため、特定の層を狙い撃ちする手法)で使われていたことが明らかになりました。
——政治的なターゲティングというのは、例えばどういうことに使われていたのですか?
個人の政治思想の傾向をもとに、誰にどういうデータを与えれば、その政治家や政党がより票を取れるようになるか分析してキャンペーンで利用することなどです、それが大きなスキャンダルになり、Facebookのトップ、マーク・ザッカーバーグがアメリカの議会で証言を求められました。
SNSで出回る内容の問題、データ収集の問題が相まって、SNSのビジネスモデルの問題が浮き彫りになっていきました。
つまり、プラットフォームの収入源は結局広告であり、広告主に売っているのは、私たち利用者のデータと時間であることがだんだん知られてきたわけです。結局、SNSのビジネスモデルは、私たちのデータと時間を奪うことを最大化するために設計されていることがわかりました。
今振り返れば、SNSのデザインや設計の問題は、この時点でもかなり話題となっていました。
GoogleやFacebookの社員たちがユーザーを依存させるための設計を告発
二つ目の批判の流れは、同じ時期に業界の中から出てきた「アテンション(注意や関心)」を利用者から集める仕組みについての批判です。
2010年代の半ばから、GoogleやFacebookの元エンジニアやデザイナーの人たちが、利用者の注意や関心を奪うために製品を作っていたことを公に語り始めました。
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