4年ぶりに帰ってきた「のんちゃんとコロナ」 引退した指揮者と感染症のスペシャリストが新型コロナを語る

世界的な指揮者の井上道義さん(ミッキー)が、感染症のスペシャリストの岡部信彦さん(のんちゃん)と新型コロナについて疑問を投げかける対談「のんちゃんとコロナ」。7月末、4年ぶりに3回目が開かれました。
岩永直子 2026.09.22
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世界的な指揮者が、政府に新型コロナウイルス対策の助言もした感染症のスペシャリストに疑問を投げかける——。

2020年4月から始まったそんな発信「のんちゃんとコロナ」が7月26日、4年ぶりに、3回目となる2026年バージョンとして行われた。

川崎市健康安全研究所参与の岡部信彦さん(のんちゃん)と、ミッキーこと指揮者の井上道義さんは、成城学園初等科楠組の同級生。近場の遠足でしばしば訪れた東京・世田谷、砧公園の大きな楠の下で久しぶりに語り合った。

コロナ対策をどう振り返るのか。すっかり新型コロナの存在を忘れたかのように見える今の社会をどう見ているのか。そして、次の世代に託すことは?

2回にわたってお届けする。

【のんちゃんとコロナ2020】

【のんちゃんとコロナ2022】

コロナの流行が始まった頃

井上 最初にこの対談をやった時(2020年4月)は、この疫病は一体どのぐらい気をつけたらいいのか、のんちゃんに聞いたんだよ。まだ本当のパンデミックにはなっていなかったでしょう?

岡部 2019年の12月に中国・武漢でウイルスが出て、日本で初めて感染者が出たのが2020年の1月、国内ではまだちょこちょこだった時だね。

井上 でも世の中は騒然となっていて、俺はみんな大げさだなと思ったんだよ。俺にはいわゆるウイルス性の普通の病気だと思えたから。

岡部 全体としてはそうだよね。でも感染者の一部の人は重症になることがわかっていたから、それには気をつけようというような話をしたんだよね。

井上 うがいをして、手を洗ってと、言われて、世の中そのニュースばかりになって。これは日本だけなのかと思ったら、ドイツもイタリアもそうなって、驚いちゃったよ。僕はこれはSNS時代の病気だなと思った。スマートフォンさえなければ、みんなこんなに騒がなかったんじゃないかと強く思っているんだけど。

——その時、公演もかなり中止になったんですよね。

井上 なったなった。だけど、コロナで演奏会を中止したくない団体もあるわけだ。収入がなくなるから。NHK交響楽団にしても、東京交響楽団にしても、読売日本交響楽団にしても、演奏会を回さなくちゃいけなかったんです。

だけど、外国人の指揮者が色々な理由で来なくなった。自発的に来ない人もいるし、ビビって来ない人もいたんです。ちゃんとした指揮者に代わってほしいから、しばらく経つと僕のところに代演の依頼が来るようになって、僕はいろんな曲を人の代わりに振りました。

だから最初の三カ月はすごく暇で伊豆の別荘で作曲をしていたんですけど、そのあとは指揮の仕事が非常に忙しくなって、そのストレスが腎臓にきました。尿路結石です。

——井上さんはコロナが5類になってから引退されたのですね。いつ頃でしたか?

井上 2024年の12月30日です。

——岡部先生も川崎市健康安全研究所所長を退かれて。

岡部 2025年3月末です。ちょうど同じぐらいの時期でしたね。

「世界中でアホなことが起きていた」

井上 のんちゃんがコロナの専門家会議に出ていて、テレビに出ている時から、言うことが専門家にしてはすごく常識的だったんだよね。俺なんかから見ると、尾身(尾身茂さん)さんはすごく気に入らなかった。 それで「俺は尾身さんが気に入らねえ」ってのんちゃんにメールをすると、彼はそのことについてはサッと身をかわして、この疫病について色々と教えてくれたんだよ。

その後、ワクチンが出てきたでしょう?そのワクチンについても、いろんな人がああだこうだ言って、「ワクチンをうったら死ぬ」という人までいて、何も信じられなくなった時代だったよね。あれは良くなかった。

よく見れば、新型コロナに感染して年寄りが死んでいるし、イタリアでもドイツでも元々病気を持った人がウイルスでダメージを受けて亡くなっていた。だいたい病院や介護施設でうつしあう。健康な人はかかっても抗体を持つことになって、二度目に感染しても軽く済むとのんちゃんは言っていたけど、そのことをあまり信じさせたくない人が多かった。

病気自体の危険性と、ワクチンをうつことの危険性を言う人がガチンコ勝負になって、みんなどうしていいかわからなくなった。ワクチンのお金も誰が出すんだ?と政治的な話になって、最低でした。

しかもそれは日本だけで起きたアホなことかと思ったら、世界中でそんなアホなことが起きていた。

一番被害を被ったのは、長年の夢だったモロッコに妻の珠世と行った時、帰る時にワクチンをうったという証明を出せと言われて、ワクチンをうったんだよ。でも検疫で、「感染しています」と言われて、1週間か10日間、ホテルに閉じ込められたことだよ。

——今はもうコロナを意識しなくなりましたか?

井上 もう全然、鼻にもかけていない。マスクもしていない。当時、のんちゃんからも言われていたから、自分がコロナに感染している場合は唾が飛ぶから、人にうつさないようににマスクをつけようというのは正しいと思って実行しています。

でも人の持っているウイルスを、マスクで防御はできない。僕は鼻が詰まりやすいので、余計息苦しいのかもしれないけれど、マスクが大嫌い。人の表情が見えなくなるのが非常に嫌いだ。しまいには合唱もマスクして歌えと言われて、そんなことをするぐらいだったら音楽会自体をやめろと言ったこともあります。音楽会をやめてもらったことも、マスクを取ってもらったことも両方ある。

あの頃、演出家の野田秀樹さんとオペラ「フィガロの結婚」を数カ所で上演したことがあったんです。暑い夏に練習をして、室内で冷房をつけるのですが、コロナの感染を防ぐためにと、同時にスタジオの窓を開けさせるんですよ。暑いのなんの!そこで100人以上の人が一カ月寄り集まってワイワイ練習していたんだけど、誰もうつらなかった。マスクする人の努力はホントに意味があるのかなと身をもって感じましたよ。

最後の最後でステージの床下で働いている文字通りの縁の下の力持ちのようなスタッフが、陽性になりました。彼だけお休みで済んだんです。

だけど、他のオペラは全部中止していましたよ。みんなただただビビっちゃったわけでしょう。

世間の忘れ去る早さと、忘れてはいけない専門家

——岡部先生はどうですか?5類になってから、社会の中ではコロナが忘れ去られたようになりました。

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