日弁連会長、政府の高額療養費制度の改訂案が憲法や国際人権条約に抵触する可能性を指摘 抜本的見直しを求める声明を発表
医療費が高額になった患者の自己負担額を抑える高額療養費制度。
新年度予算案にも盛り込まれている政府の改定案に患者団体から反対の声が上がる中、日本弁護士連合会の渕上玲子会長は、政府に抜本的見直しを求める声明を出した。
憲法が保障する「生存権(憲法第25条)」や「個人の尊厳(憲法第13条)」などを脅かしかねないと強く批判している。
高市早苗首相は、自民党総裁戦の際には、患者の自己負担を引き上げるべきではないと自己負担の上限引き上げに反対していたが、首相就任と共に姿勢を覆している。

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「患者の健康や生活を犠牲にするものであり、看過できない」
日弁連会長の声明は3月26日に出された。
政府の改定案に対し「本改定案は、新たに自己負担年間上限を導入することで長期療養者に一定の配慮をしつつも、すべての所得階層で自己負担月額上限を引き上げるもの」との認識を示した上で、
「本改定案による負担増は、多くの患者に対し深刻な生活破綻を来すおそれがある」と指摘。
その根拠として、高額療養費制度の利用者の約8割を占める年間1〜3回利用の患者(70歳未満で約320万人)は、「多数回該当(※)」の軽減措置や、新設される「年間上限」の要件を満たさないとし、
※直近12ヶ月で3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降はさらに自己負担限度額が引き下げられる特例制度。
その結果、「たとえば年間収入が200万円から400万円の層では、自己負担月額上限が、月の手取り額から食費、居住費、水道・光熱費等の生活に必要不可欠な支出を差し引いた残額(支払能力)の約60%から95%に達し得るとされる」と示し、「手取り額の大半を奪われる短期集中的な負担を強いられ、深刻な生活破綻に陥る患者が多数生じる」との認識を示した。
また、この政府改定案による保険料削減効果の政府試算について、「患者の受診抑制による削減効果が存在することを前提としつつ、受診抑制により患者に生じる健康上の悪影響の有無について評価・検討していない」と言及。
「医療保険財政の健全化という目的が重要であるとしても、こうした姿勢は、保険財政を維持するために、経済的にも健康的にも過酷な状況にある患者の健康や生活を犠牲にするものであり、看過できない」と強く批判した。
憲法や国際人権条約にも抵触の可能性
さらに、日弁連はこれまでも一貫して、「憲法及び国際人権条約に基づき、経済的理由によって医療へのアクセスが阻害されてはならないと主張してきた」と主張。
その上で、「今回の改定案は、最も弱い立場にある患者から必要な医療を受ける権利を実質的に奪いかねないものであり、憲法が保障する生存権(憲法第25条)及び個人の尊厳(憲法第13条)、並びに『到達可能な最高水準の健康を享受する権利』(社会権規約第12条、障害者の権利に関する条約第25条)を脅かしかねない」として、
今回の政府改定案が憲法や国際人権条約にも抵触する可能性を指摘した。
そして、政府に対して、「本改定案を抜本的に見直し、少なくとも現行制度に準じて令和8年度予算を再検討することを強く求める」と訴えた。
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