「キラキラした高校生活が突然、奪われた」はしか発症後、何年も経って起きる重症脳炎 家族がワクチンによる予防を訴え
国内で麻しん(はしか)が流行する中、感染症の専門家や当事者が登壇して7月9日に開かれた国会内学習会「麻しん(はしか)流行を止めるには 最新情報とその対策」(ワクチンパレード実行委員会主催)。
はしかが治った後、体内に潜んでいたウイルスが数年から十数年後に活性化して、重症の脳炎を引き起こす「SSPE(亜急性硬化性全脳炎)」も、はしかを怖い病気にしている。
この患者・家族の会である「SSPE青空の会」代表の田伏純子さんも講演し、ワクチン接種による予防を訴えた。

SSPE青空の会代表の田伏純子さん(撮影・岩永直子)
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はしか全快後、平均10年ぐらいで突然発症
亜急性硬化性全脳炎は、英語ではsubacute sclerosing panencephalitisといい、その頭文字を取って、SSPEと呼ばれている。ワクチン接種前に1歳前後で自然感染した場合、回復後に、わずかな人が平均10年の潜伏期間の後、脳炎を発症する。

田伏純子さん提供
現在日本国内の患者数は約60人。そのうち青空の会の会員は22人で、20歳〜51歳。SSPEを発症した年齢は、2歳〜22歳だ。これまで亡くなった人は、4歳から47歳の間に息を引き取った。

田伏純子さん提供
青空の会では毎年サマーキャンプを開催している。
2015年に東京都内で開催し、都庁の展望台に遊びにいった時の写真がこれだ。

田伏純子さん提供
7人の患者の子供たちが参加したが、このうち3人は既に亡くなった。元気いっぱいだった子供が、ある日突然発症し、言葉も発することができなくなり寝たきりになる。そして親よりも先に旅立ってしまう。過酷な病気だ。
生後11ヶ月、予防接種の前にはしかにかかる
田伏さんの次女、文(あや)さんは1981年、生後10ヶ月ではしかにかかった。はしかが全数報告になったのは2008年のこと。その頃の報告数は約1万人だったが、文さんがはしかにかかった頃は、もっと数多くがはしかに自然感染した時代だったろうと田伏さんは振り返る。

田伏純子さん提供
現在ははしかの第一期予防接種は1歳からだが、文さんが生まれた頃は1歳半からだった。文さんがはしかにかかったのはもちろん予防接種前だ。
「はしか自体は10日くらいで治って、その後は大きな病気もしないでむしろ健康優良児と言われるくらい元気に成長しました」
小学校の時はリレーの選手に 文武両道の少女時代
文さんは運動が得意で活発な少女だった。

田伏純子さん提供

田伏純子さん提供
「左側の写真は小学校の運動会ですが、1年生から6年生までクラス対抗のリレーの選手に選ばれるような足の速い子でした。中学校の時には陸上部に所属しました。右の写真は陸上部で駅伝大会に出た時の写真です」
運動だけで活躍していたわけではない。高校は神奈川県トップクラスの県立湘南高校に進学。保育園の年長から高校2年生まではピアノを習っていた。これは高校1年生の頃、発表会で演奏した時の写真だ。

田伏純子さん提供
「ちょうどSSPEを発症した直後の時期に、高校2年生での発表会が予定されていたのですけれども、それには出られませんでした」
高校2年の夏にSSPEを発症 呼びかけにも応えられないように
こんな日々がこれからも続くと思っていた高校2年生の6月、突然、病が襲いかかった。

田伏純子さん提供
「あの日、部屋に寝にいってから、また起きてきて『お母さん、足がピクッとする』と言ったのが始まりです。キラキラした高校生活を送っていた最中のことでした」
下はSSPEを発症して2ヶ月の写真だ。

田伏純子さん提供
「転んでしまうし立てない状態だったので、車椅子を使っていました。この時はまだかろうじて話はできていましたけれど、この直後からもう言葉も出なくなりました」
「眼鏡を取ってほしいと言うのに『め』とか、トイレに行きたいので『ト』と言うぐらいしか言葉が話せなくなりました。この後、発症から数えて9ヶ月半ぐらいの時にもう意識がなくなって、呼びかけには応えなくなりました。それから1ヶ月後、発症から数えると10カ月半の時に呼吸が停止しかかって、人工呼吸器になりました」
最初に診断を受けた時に、主治医から「2年から5年で死亡か寝たきりになる」と言われて動揺した。実際には、10ヶ月半で寝たきりの状態になった。それほど早い進行だった。
呼吸停止後、1週間くらい生死をさまよったが、その後、症状は落ち着いた。8年間、自宅で過ごした後、父親の病気のため家庭では介護できなくなり、重症心身障害児施設に入所した。今もそこで生活している。

田伏純子さん提供
「もう30年近い闘病生活を送っています。17歳直前に発症して、もうじき46歳になります」
流行を常に気にかけ「子供がSSPEを発症すると親は気が狂ったようになる」
これは2019年〜26年の麻しん患者の報告数の推移だ。今年は2019年の流行を追い越すレベルで増加していたが、現在少し増加のスピードが緩んだ。しかし田伏さんらは、新たなSSPE患者がこれでまた発生するのではないかと恐れを感じている。

田伏純子さん提供
「新しくSSPEになったお子さんにサマーキャンプなどでお会いすると、その時ご両親はほとんど狂っているんですね。私も1年間はもう狂った状態でした。その次の年に会いに行くと、顔がようやく普通になったねと言われるくらい、親たちは狂った状態でいます。そういう子供たちやそういう家族を見たくないので、はしかの流行については常にこうやって気にかけています」

田伏純子さん提供
特に田伏さんらが気にかけているのが、0歳、1歳、2歳ぐらいでのはしかの発症だ。2016年はこの年代は15人がはしかにかかり、そのうちワクチン接種前の子供は10人いた。
「私たちはその10人のお子さんがSSPEにならないか、危惧しています」
治せない病気だが、かからせないことはできる
SSPEをひとたび発症すると、治療法がない。
「治せない病気なんです。しかし、かからせないことはできます」

田伏純子さん提供
ワクチン接種対象前の1歳未満の子供がはしかにかからないようにするには、感染しないように防御するしかない。
「皆さんのお知り合いのご家族の中にも0歳の赤ちゃんがいらっしゃるかもしれません。コロナの初期のようにものすごく怖い状況だったら、赤ちゃんは家から出せません。例えばスーパーに行くこともできないし、お姉ちゃんやお兄ちゃんの幼稚園の送り迎えに連れていくこともできないし、一歩も出せません」
現在、MRワクチンの接種率は落ちているが、はしかの流行はある程度抑えられているので、0歳の赤ちゃんも普通に地域で生活ができている。
「そんな風に地域にはしかが流行していない状態を続けるには、MRワクチンの接種が大事です。私たちSSPEの家族たち、子供たちはこうやって大きな声で訴えても、子供たちが治るわけではない。それでも、もうこれ以上SSPEの子供は見たくありません。ワクチン接種を強く訴えたいと思います」
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