HPVワクチンを男性にも早く公費でうたせて 厚労相に学生らやHPV議連が要望と署名提出
子宮頸がんや肛門がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。
現在は、小学6年生から高校1年相当の女性が公費で受けられる定期接種の対象となっているが、対象を男性にも拡大することを求め、学生らが約1万9000筆の署名を、自民党のHPVワクチン推進議員連盟が早期の定期接種化を求める決議を上野賢一郎厚労相に手渡した。
HPVワクチンについての啓発活動を続けてきた署名発起人の服部翼さん(24)は、「この署名提出をきっかけに、男性の方々にもHPVワクチン接種はメリットがあることを広く知っていただければ嬉しい」と訴えた。
HPVワクチンが感染を防ぐウイルスは、子宮頸がんだけでなく男性もかかる肛門がんや中咽頭がん、陰茎がんなどの原因にもなることが明らかになっている。G7主要7か国で男性に対する公費接種が認められていないのは日本のみで、対応の遅れが度々批判されてきた。
HPVワクチンは種類によって3回で5万円〜10万円かかり、公費接種の対象になっていない男子は経済的な負担から接種しにくい状況が今も続いている。

上野賢一郎厚労相に男子の早期の定期接種化を求めた議連議員や署名発起人の服部翼さん(右から2番目)ら
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上野厚労相に学生有志らの代表やHPVワクチン議連が要望を手渡し
この日、上野厚労相に署名や要望書を提出したのは、HPVワクチンの啓発活動を続けてきた署名発起人の服部翼さんや、医学生らによる啓発団体「Vcan」などの学生有志、産婦人科医としてHPVワクチンの啓発を続け、学生らのアドバイザーとなっている高橋幸子さんら。署名は2021年11月から今月7日までに1万9516筆になった。
署名と共に提出された「子宮頸がん撲滅とHPVワクチン関連疾患予防のための男子へのHPVワクチン定期化を求める要望書」では、以下の2点を求めた。
男子を早急にHPVワクチン定期接種の対象とし、遅くとも2027年4月には男子を対象とした定期接種を開始すること
女子キャッチアップ接種(※)対象世代と同年代の男性についても、公費によるキャッチアップ接種を実施すること
※公費接種の機会を逃した女性(平成9年度生まれ~平成19年度生まれ)に公費接種の再チャンスを与えた制度。
またHPVワクチン推進議員連盟からは会長の田村憲久・元厚労相や幹事長の三原じゅん子参院議員らが、「HPVワクチンの男性への早期定期接種化を求める決議」を手渡した。
こちらの決議でも、
2027年4月を目途に定期接種の男性への拡大を実現すること
HPVワクチンの接種率の目標を設定するとともに、接種率向上に向けた実効性のある施策を強力に推進し、HPV関連疾患の早期制圧を目指すこと
を求めた。
「10万円の費用はハードルが高い」「平等ではない」「海外と比べて恥ずかしい」
手渡し後、記者会見した服部さんは、「大臣からは当事者の声を届けてくださりありがとうございます、前向きに検討しますと言っていただいた」と大臣の反応を振り返った。
服部さんは大学生の時に付き合っていたパートナーから「私もうつからあなたもうって」と言われたことで、HPVワクチンは男性にも有意義なワクチンであることを初めて知った。そこから、啓発活動に関わるようになった。
学生には接種費用の負担は重かった。社会人になった今も、9価ワクチンは3回で約10万円という経済的なハードルは高く、接種できていない。学生時代、すでに男性の定期接種が始まっているアメリカに留学した時、まだ接種していないことをアメリカ人に伝えると「あり得ない」と驚いた顔をされたことを覚えている。
「そんな個人的な経験からも、日本の現状は非常に問題としては大きいと思っています。いち早く解決に向けて動いてほしいと思います」

大臣面会後、記者会見する高橋幸子さん(左)、服部翼さん(真ん中)、高畑紀一さん(右)
署名活動を始めてからの4年でHPVワクチンの認知度は上がり、男性も承認されている中でもっとも効果の高い9価ワクチンが適用になったのは前進していると感じている。だが費用の面で接種をためらう男子は多い。
「あとはもう1歩、男子の定期接種化の最後の1歩が足りないので、そこに向けて動いていただきたいなと思っています」
当事者の声が国を動かすとして、学生と共に啓発や要望活動を続けてきた産婦人科医の高橋幸子さんは、日本で100近い自治体で男子接種について助成制度ができていることに触れ、「その自治体の子たちは守られるけれども、日本全国、他の自治体の男の子たちの命が守られない状況は平等ではない」と指摘。
カナダやオーストラリア、イギリス、アメリカなど海外先進諸国では、性別にかかわらず8割近い接種率となっており、アメリカでは女子よりも男子の方が多く接種されている現状も説明し、こう訴えた。
「男性も女性もうつことで子宮頸がんが減ることが世界中でエビデンスとして示されていますので、男性自身のがんを防ぐだけでなく、子宮頸がんを減らすという目線でも、性別にかかわらず早く接種できるようになってほしい。いずれ男子が定期接種化される時が来るでしょう。それが3年後になるのか、1年後になるのかですが、うちそびれたという気持ちになる人たちを増やすだけなので、さっさと定期接種化を始めてほしいと思います」
さらにやはり共に啓発活動を続けてきた高畑紀一さんは、女子だけ定期接種化されている状況で、蔑ろにされているのは男子だけではないと説明。
「男性も女性も関係なく感染するウイルスの感染を防ぐのに、女性にだけ今、接種のリスクを負わせているのが日本という国。そういう意味では、女性に対してだけ負担を求め続けている状態は、我々男性の側から見ても、海外の状況と照らし合わせて恥ずかしい状態だなと強く思っています」と訴えた。
費用対効果、現実より低く見積もっていないか?
HPVワクチンの男性への定期接種化については、2024年3月、「第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」に提出された費用対効果を推計した資料に基づいた議論によって、費用対効果が悪いと結論づけられ、定期接種化が見送られている。
ところが、この費用対効果を検討した資料については、疫学者や産婦人科医らの専門家から、「現実より低く見積もられていないか?」と疑問が相次いでいる。
通常こうした費用対効果の検討には必須な分析モデルが使われていないことや、発症予防効果の継続期間が海外よりも短く見積もられていること、女性の接種率が低い日本で現実離れした高い接種率を前提に計算が行われていることなどが指摘されてきた。
この日、男性の定期接種化の検討状況を厚労省の予防接種課に尋ねたところ、「現時点でお伝えできるようなことはない」との回答があった。
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