メディアを退席させ「自由闊達な議論」 高額療養費議連が非公開で論点整理
政府による高額療養費の見直しがいったん凍結されて、改めて超党派で議論しようと設立された「高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟」(会長=武見敬三・前厚労相)。
4回目の総会が6月17日に開かれ、ここまでの議論の論点整理がなされた。
冒頭、事務局長の中島克仁衆院議員が、武見会長の挨拶後、メディアに退席を求め、終了後に事務局長がブリーフィングをすると説明。
筆者は「国民にとって重要な議論だからメディアにもオープンにしてくれ」と求めたが、聞き入れられなかった。

冒頭挨拶をする会長の武見敬三議員と事務局長の中島克仁議員(右)
選挙前に超党派の議論の論点整理を
冒頭、武見会長は、「党派を超えて共通の認識をこの課題についてきちんと作ってみようということで活動を開始した。いくつかの意見を聞かせていただいた中で、それぞれの先生方の意見も拝聴し、改めて参議院選挙の前に、あるいは通常国会期中に一定の論点はここでまとめておこうということになりました」と挨拶。
「共通認識ができると解決の方向性はかなり議論できるようになりますが、まだそこまで踏み込んで合意を形成するところまではいっておりません。改めて論点整理をこの場でやった上でそれから後、先生方と共に超党派の議論を進めていきたい」とここで論点整理する意義を語った。
そして、「都議会議員選挙が始まったり、参院選挙になって参りますと、先生方それぞれのお立場でお忙しくなってきますので、超党派の意見の形成をきちんとするのは難しい技ではありますが、課題の重要性に鑑みてご支援とご協力をいただけることをお願い申し上げて挨拶と代えさせていただきます」と述べた。
メディアの同席を要望するも、退席を求められる
ここでメディアは退席を求められたが、筆者は立ち上がり、「フリーランスの医療記者の岩永と申します」と名乗った上でこう要望した。
「国民にとってもすごく重要な議論なので、メディアにも議論の過程をオープンにしていただきたい。退出してかいつまんだ要点だけブリーフィングするのは、どのような意見が出たかよくわかりませんし、どなたによってどんな意見が出たかを知りたいのでぜひ同席させていただきたいと思います」
これに対し、事務局長の中島議員は「一応、私が別にかいつまんでということではなくて、後ほどどういう意見が出たかはちゃんとブリーフィングさせていただきたい」と返答。
筆者は「そうだとすれば、ここできちんと議論も聞かせていただきたい。国民の知る権利のために我々はここに集っているので、オープンに議論してもらわないと困ります。そんな排除するようなことはしないでください」と反論した。
そして「厚労省の審議会もオープンにすることが原則とされている。国民にとって重要なことを議論するからです。国会議員の皆さんは国民に選ばれてここにきているのですから、議論の過程も国民につまびらかに、透明性を持って議論していただきたいと思います」とさらに要望した。
そこで一人の男性(名乗らなかったため、どのような立場の人かは不明)が手を挙げて「今のご意見は確かにその通りだと思います。しかし一方で、事務局としての考え方があってやってこられていることですので、冒頭の決めに沿って私は進めていただいて構わないと思います。ただ、今の意見は非常に重要ですので、次回以降、改めてご参加いただけるかどうかを議論して進めて頂けたらと私は思います」と発言した。
中島議員はこれを受けて、「前回、前々回も役員会も含めて色々自由闊達に意見交換をしてきたところであります。今日、各省庁にもきていただいて、各党にもそれぞれのお考えがある中で、メディアの皆さんを別に排除するわけではないんですけれど、前回、前々回から自由闊達に意見交換をする場が非常に有意義だったこともあり、今回は決して排除するとか隠し立てするわけではないのですけれど、先ほど会長からも話がありました論点整理のたたき台を今日お示しさせていただき、ご意見をいただいたうえで最終の論点整理をまとめさせていただくためのものということ」と説明。
「今回、事務局といたしましては、メディアの方に決して隠し立てするわけではなく、私が代表して後ほどブリーフィングをするということで各党のみなさんにご理解をいただいているところでございますので、ぜひそのへんはご了解いただきたい」と述べた。
筆者は「全く了解はできません。こんなのは全然透明性のある議論だとは思えないので、私はこれで取材を退出させていただきます」と取材を終えた。
資料では二つの論点を提示
この議連は、政府によって、高額療養費制度の見直しが患者の意見を聞くことなく進められたことに不信感を持った全国がん患者団体連合会らが、与野党の議員に呼びかけて設立に漕ぎ着けた。
患者団体の反対を受けて、政府は修正を重ねたうえで見直しをいったん凍結したが、10月までに制度の再検討をするとしている。
3月24日に発足した同議連は、これまで患者団体からの意見や医療経済学などの専門家の分析などをヒアリングし、議論してきた。
それを踏まえ、冒頭に配られた資料では、政府の見直しが「がん患者や難病患者など当該制度を利用している当事者の意見を聴くこともなく短期間の審議会による議論で決定するなどプロセスが不適切であった」と議論の過程が民主主義的でなかったことを批判。
その上で、以下の二つの論点がまとめられていた(その後の議員たちの議論は不明)。
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制度変更により多大な影響を受けることが見込まれる患者等の意見が十分に反映されるようにするとともに、療養費用負担の家計への影響や必要かつ適切な受診への影響について分析し、その結果を社会保障審議会医療保険部会高額療養費制度の在り方に関する専門委員会での制度変更の検討に用いられるようにすること。
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専門委員会での検討は、保険とは「大きなリスクに備える」ものであり、高額療養費制度は「最後のセーフティネット」として保険の根幹を成す優先すべきものであることを踏まえ、保険者、医療の担い手等の関係者から十分に意見を聴いた上で、慎重かつ丁寧に進めること。
さらに最後に、「高コスト化する高度先進医療について、国民一人一人が持続可能な形でアクセスできるようにするかなど、より良い社会保障のあり方について、党派を超えて共通の理解を求めて議論を続けていく」と書かれていた。
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