高額療養費制度、高市首相、患者自己負担上限の引き上げ可能性は否定せず 「患者の苦しみや悩みや絶望感、よくよく分かってるつもり」
医療費が高額になった患者の自己負担額を抑える「高額療養費制度」の見直しに、患者団体が反対の声を上げ続けている。
衆議院予算委員会が11月7日開かれ、立憲民主党の衆院議員で、与野党で構成する「高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟」事務局長の中島克仁氏が、高額療養費制度の見直しについて高市早苗首相の考えを質した。
自民党総裁選時の政策アンケートでは、患者の自己負担上限額については「引き上げるべきではない」と答えていた高市首相に対し、総理就任後の今も考えは変わらないか質した中島氏に対し、高市首相は「増大する高額療養費を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から検討を進めていくという風に聞いております」と答弁。支払い能力のある患者に対しては引き上げる可能性を否定はしなかった。
一方で、高額薬剤を使い続けている患者の一人として、「患者の苦しみや悩みや絶望感は、よくよく自分で分かってるつもり」と、高い治療費を払い続けなければならない患者への共感を示した。
衆院予算委員会で高額療養費制度について答弁する高市早苗首相(衆議院インターネット審議中継より)
医療記者の岩永直子が吟味・取材した情報を深掘りしてお届けします。サポートメンバーのご支援のおかげで多くの記事を無料で公開できています。品質や頻度を保つため、サポートいただける方はぜひ下記ボタンから月額のサポートメンバーをご検討ください。
「増大する高額療養費を、能力に応じてどのように分かち合うか」
首相に就任した今の認識を質した中島氏に対して、高市首相は「先ほど関節リウマチという話がございましたが、私もその患者でございます。なんとか薬剤で進行を止めているという状況でございます」と自身も高額薬剤で治療を続けている患者の一人であることを強調。
一方で、「高額療養費が患者の方々にとって大切なセーフティーネットであり、これを将来にわたって堅持していくということが必要だと考えている。現役世代の負担軽減という観点も考えなければいけません」と制度維持や保険料を支払う現役世代の負担軽減も検討する必要性に言及した。
その上で、「高額療域制度のあり方についても、医療保険制度全体の中で検討していくということが必要」として、医療制度全体で検討する課題という認識を示した。
12月までに方針決定?「増大する高額療養費を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から検討を進めていく」
中島氏は、上野賢一郎厚労相が、高額療養費の見直しの方針決定について12月と記者会見で答えたことを挙げ、「社会保障全体の中で、その制度改革の中で、最後のセーフティーネットである高療費をいかに位置づけるか。患者自己負担の引き上げについて、結論は12月などということはあり得ない」として、高市首相の考えを質したが、高市首相は時期については明言を避けた。
高額療養費の見直しについて質問する中島氏(衆議院インターネット審議中継より)
その上で、
「専門委員会や審議会における議論では、 高額療養費制度のあり方について、医療保険制度改革全体の中で全体感をもって議論する必要があるという認識で一致していると聞いている。こうした点も含めて、患者の方々の経済的な負担が過度なものとならないように配慮をしながら、一方で増大する高額療養費を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から、検討を進めていくと聞いている」と述べ、経済的能力によっては自己負担の上限を引き上げる可能性を否定しなかった。
続いて答弁に立った上野厚労相は、「全体的な改革の議論の中でこの高療費だけを取り出して先にということはなかなかいかないだろうということで、全体的な議論を今進めてる中で、年内にはそれを取りまとめられるのではないかという観測の中で12月に差し掛かるかもしれないというお話をさせていただいた」として、年内に方針を取りまとめる可能性を改めて示した。
「患者の方々の苦しみや悩みやその時の絶望感は分かっている」
中島氏は、「今日このテーマを、固唾を飲んで見守っている患者さん方がおられる。制度の持続性も大事であるが、より困難な状況に置かれている方々が上限が引き上げられて制度を利用できなくなるようなことになっては本末転倒」と釘を刺した上で、再度、12月の患者の自己負担上限引き上げはしないように求めたところ、高市首相は自身の患者としての経験も踏まえて、こう答えた。
「私も難病患者でございます。その病名を告げられた時にはもう絶望的な思いになりました。つまり一生ですね、一生この薬剤を打ち続ける。注射ですけれども、打ち続けなきゃいけないのかと、しかも高いということで、相当絶望的な気持ちになりました。そういう患者の方々の苦しみや悩みやその時の絶望感、そういったものはよくよく自分で分かってるつもりでございます。医療制度改革全体の中で、しっかりと丁寧に考えていくという考え方には変わりはございません」
医療記者の岩永直子が吟味・取材した情報を深掘りしてお届けします。サポートメンバーのご支援のおかげで多くの記事を無料で公開できています。品質や頻度を保つため、サポートいただける方はぜひ下記ボタンから月額のサポートメンバーをご検討ください。
すでに登録済みの方は こちら
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績