「がん遺伝子パネル検査」を標準治療終了後にしかできないのは人道的にも問題 患者団体や関連学会などが制限撤廃を求める緊急提言

数多くのがん細胞の遺伝子を一括で解析し、その患者に合った治療法を探す「がん遺伝子パネル検査」。厳しい要件により、保険で受けられる患者が限られている問題をどうにかしようと、がん患者団体やがん学会などが合同で緊急提言を出しました。
岩永直子 2026.07.16
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がん細胞の遺伝子を解析し、その患者のがんに合った治療法を探す「がん遺伝子パネル検査」(※)。

しかし、日本では標準治療がなくなってからというタイミングの制限があるため、保険で受けられる患者が限られている。

多くの患者が適切なタイミングでこの検査を受け、最善の治療を見つけるチャンスを得られるように、全国がん患者団体連合会ら患者団体と、複数のがん関連学会が合同で7月14日、「保険診療で実施するがん遺伝子パネル検査の適正な運用に関する緊急提言」を出した。

※がん細胞の数十から数百の遺伝子を一度に解析し、その中で起きている遺伝子の変化を調べることで、効きやすい薬があるかを探索する検査。検査結果は「エキスパートパネル」と呼ばれる専門家の集まりで検討し、その意見を参考に治療法が提示される。

厚労省の佐々木昌弘危機管理・医務技術総括審議官に提言を手渡す天野慎介・全がん連理事長

厚労省の佐々木昌弘危機管理・医務技術総括審議官に提言を手渡す天野慎介・全がん連理事長

がん遺伝子パネル検査のタイミング制限の撤廃を要求

今回、緊急提言を出したのは、全国がん患者団体連合会、日本希少がん患者会ネットワーク、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、ゲノム医療推進研究会の6団体。

提言では、保険適用となっているがん遺伝子パネル検査は、標準治療終了か終了見込みのかなり進行したタイミングでしか実施できないため、症状の悪化などにより、この検査に基づく治療が7.6%にしかできていないことを指摘。

抗がん剤の適応になった時点で早期にがん遺伝子パネル検査を実施し、それぞれの患者に適した薬剤で治療し、効果の期待できない治療を避けることが世界の常識であるとして、日本の現状を、こんな言葉で厳しく批判している。

「我が国では、保険適用以来7年もの間、標準治療終了のタイミングでしか実施できない状況が続いており、今後も変わらない現状は医学的のみならず人道的にも極めて問題である」

その上で、京都大学医学部附属病院が全国6施設で実施した先進医療B(※)で検討した結果、標準治療開始前にがん遺伝子パネル検査を実施することで、22.7%の患者がこの検査結果に基づく治療ができ、生存期間も延長することが示されたと説明。

※保険適用を目指して観察や評価が必要な新しい医療技術。かかった費用は全額自己負担だが他の保険診療と併用できる。先進医療Bは、保険収載の準備段階に入った先進医療Aよりもより慎重な検証が必要とされている。

「現在、保険適用になっているがん遺伝子パネル検査の実施タイミングの制限を速やかに撤廃し、適切なタイミングでの実施を可能とし、適正なガイドラインに従い、主治医の判断のもと適切な薬剤を速やかに患者に届けられるよう、直ちに診療報酬上の取り扱いを変更することを強く求める」と要求している。

「厚労省はいつまで検証を続けるつもりなのか?」

この日、衆院第二議員会館で開かれた会合では、まず全がん連理事長の天野さんが提言の趣旨を説明し、国会では高市早苗首相や政府から前向きな答弁があったことを報告。

制限の早期撤廃を訴える全がん連理事長の天野慎介さん

制限の早期撤廃を訴える全がん連理事長の天野慎介さん

また、塩崎恭久元厚労相が会長を務める議員と有識者の協議会「ゲノム医療推進研究会」や、丸川珠代衆院議員が委員長を務める自民党の「医療情報政策・ゲノム医療推進特命委員会」も、主治医が判断する適切なタイミングで保険適用すべきという趣旨の提言が出されていることに触れ、政府や政治家もこの制限撤廃に前向きであることを強調した。

しかしこれに対し、厚生労働省は「依然として先進医療Aの枠組みで科学的根拠の収集を集めるとしていて、エビデンスや学会の見解を踏まえて中医協などで議論を進めるとの方針を示している」と、制限撤廃に慎重な姿勢を崩していないことを指摘し、こう訴えた。

「これに対し、患者さんや医療者の方々から、いったいいつまで検証を続けるおつもりなのかという声も上がっている現状です。今この瞬間も最適な治療の機会を待ち望んでいるがん患者さんが多くいらっしゃいます。主治医の判断で最適な検査を行うことができれば、効果の期待できる薬剤を使用することが可能になり、無駄な治療も減りますし、医療費の削減にも寄与できるものと信じております」

「十分医学的なエビデンスが得られている中、ぜひ私たちがん患者の切実な声をお聞きいただき、現在の実施タイミングの制限を速やかに撤廃の上、直ちに診療報酬上の取り扱いを変更していただきたいと強くお願いします」

その後、提言書を厚労省の佐々木昌弘危機管理・医務技術総括審議官に手渡した。

初回治療からがん遺伝子パネル検査を使うことで、その後の経過が改善

続いて、吉野孝之・日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会両理事長は、標準治療を終えた後と、治療を始める前にがん遺伝子パネル検査を行った患者の経過を示した研究結果を報告した。

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