なぜラップで性教育? 若手男性医師が得意技で医療発信を始めたわけ

HPVワクチンの男性接種についてラップバトルの形の啓発動画を作った2-Way先生こと、池田龍生さん。なぜラップで性教育を始めようと思ったのでしょうか?
岩永直子 2026.09.11
誰でも

子宮頸がんや肛門がんを防ぐHPVワクチン。

小学校6年生から高校1年生相当の女性のみ公費でうてる定期接種となっているが、無料で接種できる権利を男性にも広げようという動きは足踏み状態が続いている。

医師でラッパーでもある2-Way(ツーウェイ)先生こと池田龍生さん(26)は、この男性接種について啓発動画を作ったが、なぜラップという形だったのだろうか?

2-Way先生

2-Way先生

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サッコ先生と出会って性教育の世界へ

——そもそもラップで性教育の動画を作ろうと思ったのはなぜなのでしょう?広島で過ごした中高生時代にラップを始めたんですよね?

中学時代にラップバトルブームが起き、僕も高校生の時からフリースタイルバトルに参加していました。その頃から即興ラップを作っていたので、今回性教育の啓発動画を作るときに、それが使えるかなと思い出したのですね。こういう賛成と反対がリアルに意見を戦わせ合うのに、ラップバトルという形が似合うなと思いました。

——医学部進学で埼玉医科大学に進んで、そこで性教育に熱心に取り組んでいるサッコ先生(高橋幸子先生)に出会ったのですね。

そうですね。

活動のきっかけを作ってくれたサッコ先生こと、高橋幸子さんと

活動のきっかけを作ってくれたサッコ先生こと、高橋幸子さんと

——なぜそこで性教育を?産婦人科に進んだのですか?

いや、僕は救急医なので、何者やねんと思われていると思います。元々父が広島で整形外科医として開業していたし、後を継ぐために整形外科に進むつもりだったんです。

ラップに関しても医療情報を伝えたいと思ってやっていたわけではなくて、純粋に聞いてくれた人が喜んでくれるのが好きで続けていました。でも大学に入って時間とお金に比較的余裕が出てくる中で高校の時よりも発信できるチャンスが増えたのに、自分の言いたいことだけ言って終わるのはもったいないなと思っていました。

そんな時に、サッコ先生と出会ったんです。大学5年生の時にサッコ先生を知っていた友達に「こいつラップできるんですよ」と紹介されました。それをきっかけに、サッコ先生の性教育講演を聞きに、学校に一緒についていくようになり、これはすごいなと感銘を受けたんです。ラップと違って、こういう伝え方もあるんだなと思って。

——何がラップと違ったのですか?

サッコ先生は子供たちに参加してもらうんですよ。ロールプレイをしてもらったり、質問に答えてもらったり。自分の伝えたいことを、こうやって子供たちに伝えることができるのかと発見して、新鮮な思いでした。

当時フリースタイルのラップバトルに参加する人はたくさんいて、自分でなくてもいいやと思えるところもあったんです。でもサッコ先生にラップで性教育してよと求められ、性教育とラップを組み合わせることができるのは日本中で僕しかいないなと思いました。それが4年前のことです。

コンドームのラップが最初の性教育動画 令和の虎で融資獲得も

——最初はコンドームの必要性について取り上げたんですよね。

サッコ先生と交流しているうちに、滋賀県に「びわコンドーム」という性教育用のコンドームを作っている知り合いがいると聞いて、「何、それおもろいわ」と思ったんです。

性教育用に作ったコンドーム

性教育用に作ったコンドーム

性教育ってやはりまず興味を持ってもらえないと難しいところがある。でもそこで面白いコンドームを使ったら、それをきっかけに話を聞いてみようかなとなるかもしれないと思いました。

「僕も作りたいです」と言って、自分のお金で性教育用のコンドームを作って、曲を作りました。サッコ先生に歌詞について色々監修してもらって、最終的に「これで行こう」と言ってもらえて完成しました。そこから、映像も作ったという流れです。

——それだけで終わらずYouTubeの番組『令和の虎』で、「自分のラップで1万人にコンドームを配りたい」とプレゼンして、融資を勝ち取ったのですね。

そうなんです。あのコンドームを作ってサッコ先生の周辺はものすごく喜んでくれました。でもこれで終わったのではもったいない。このコンテンツはすごいし、万人ウケするんじゃないか、もっと広げたいと思ったので、令和の虎に応募しました。

120万円の融資希望に対して全額認められ、コンドームを1万個作りました。これまで7000人の若者に配ってきました。

——ご自身が講演やラップを披露しながら配っているのですか?

そうですね。特に広島に帰ってからは、サッコ先生のもとを離れたので、サッコ先生から学んだことをもとに色々やらせてもらっています。

性教育の話をして、コンドームの付け方も伝えるのですが、僕の授業では最後の方で子供たちはだんだん眠くなってくるんですね。そこで最後の最後にラップをやる。眠りそうになっている時にラップで起こして、ちょっと面白いなと思ってもらえているかなという感じです。

救急医療や市販薬依存でもぜひ

——今回、HPVワクチンの男性接種をテーマにしたのはなぜですか?

元々HPVワクチンについての話はあったのですが、サッコ先生たちが厚労省に要望書を出すタイミングで、僕も動画を出そうと準備をしていました。

——今後もラップによる性教育や、動画作りは続けていく予定なのですか?

やっていきたいですね。若者に届けたい性教育がある以上、僕のやり方で何を伝えられるのか探っていきたい。今回の記事を読んで「これもラップにしてほしい」という希望があれば、ご連絡いただければ考えたいと思います。

今まで、普通のことで伝わっていないことがたくさんあると思うので、普通じゃないことをいっぱいやって、少しでも伝えていきたいと思います。今回のHPVワクチンの曲も、批判の声はたくさん来ているのですが、批判の声をよく読むと、よく歌詞を聞いてくれているし、学んでくれているとわかって嬉しくなりますね。

コンドームも残りの3000個を配ったら、また1万個作ろうと思っています。クラウドファンディングなどで費用を募って、コンドームを配りながらの性教育を継続していければと思っています。

僕は元々、学校の先生になりたかったんです。高校生の時から将来の夢は学校の先生。親が開業医で継ぐために医者になったのですが、医者として学校に教えにいけば自分の夢も叶う。僕は救急医をやっているので、救急分野でも学校教育ができたらなと思います。

——なんか熱中症対策とか、救命救急の方法とかもやってほしいですね。救急分野以外でも、今、市販薬依存の子供が増えているのでそういう啓発授業もやってほしいです。

わかりました。考えてみたいと思います!

——ところで、2-Way先生とはどういう意味でつけたのですか?

メス(医療)とマイク(ラッパー)の二刀流という意味で2-Wayです!こんな二刀流は、日本で僕しかいないんじゃないかなと思ってます。

(終わり)

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