子宮頸がんを防ぐワクチンがあることを知っていますか? うち逃した人が無料でうてるチャンスは3月31日まで!
30代後半から50代にかけて発症率のピークがあり、子宮頸がんになると多くの場合、子宮や卵巣を摘出する手術が必要になります。子育て世代がかかることも多いことから「マザーキラー」とも呼ばれています。
その子宮頸がんを防ぐ高い効果があるのが、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンです。
小学校6年生から高校1年生相当の女性は公費でうつことができます。また、今だけ、うち逃した平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)は今年3月までに1回目をうてば、3回の接種がすべて無料になります。
特に効果の高い9価ワクチンは3回で10万円かかり、子宮頸がんを9割近く防ぐことができます。

9価ワクチン(MSD)
そんなワクチンを無料で受けられる期限が今月末に迫っています。ぜひチャンスを逃さないでください。
HPVワクチンって何を防ぐの?効果はあるの?
HPVワクチンは何を防ぐワクチンなのでしょうか?
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスに感染し、そのウイルスがずっと感染し続けることで起こるがんです。
感染し続けると、一部の人は細胞が壊れていき、前がん病変(異形成)という、がんになる手前の状態になります。そして一部ががんにまで進行してしまうのです。
子宮頸がん検診は、この前がん病変の状態で見つけて早めに治療することを目指しますが、HPVワクチンはHPVに感染すること自体を防ぐワクチンです。つまりがんになる原因を元から断つワクチンです。
このHPVというウイルスは、セックスやアナルセックス、ペッティング、オーラルセックスなど、性的な接触を行うことで感染します。性的な経験がある男女の8割が感染しているありふれたウイルスです。
HPVは200種類以上あることがわかっており、そのうち15種類程度が特にがんになりやすいことがわかっています。HPVワクチンは、この特にがんになりやすいHPVに感染するのを防ぎます。
性的な経験を始める前に接種することが効果が高いため、セックスデビュー前に接種することが勧められています。
日本では、2価ワクチン(商品名・サーバリックス)、4価ワクチン(同・ガーダシル)、9価ワクチン(同・シルガード9)がうてますが、この数字は感染を防ぐことのできるHPVの種類の数を指しています。
4価ワクチン以上は、尖圭コンジローマという良性のイボも防いでくれます。
HPVは子宮頸がんのほか、肛門がん、中咽頭(ちゅういんとう)がん、陰茎がん、外陰がん、腟がんなどの原因になることもわかっています。
男性もかかるがんに関わりますし、HPVのうつし合いもあるので、男子も公費でうてる国が多いです。日本でも今、公費接種の対象を男性まで広げることを検討中です。
スウェーデンの研究では、17歳未満で接種した人では88%もがんになるリスクが減少していたことがわかっています。イギリスの研究でも12〜13歳でワクチン(2価ワクチン)を接種した学年は、子宮頸がんを87%減少することができたと報告されています。とても効果の高いワクチンです。
HPVワクチン、危なくないの?
HPVワクチンは、せっかく国のお金でうてるのに、接種率が1%未満にまで下がったことがありました。そんなに危険なワクチンなのでしょうか?
HPVワクチンも他のワクチンと同様、多くの人は注射をうったところに痛みや腫れ、赤みなどの症状が起こることがあります。また、ごく稀に重いアレルギー症状や頭痛・嘔吐などの副反応が起こることも報告されています。
さらに日本では、2013年4月に公費でうてる「定期接種」になった時に、接種後に体調不良を訴える女子が何人も出てきました。これをマスメディアは「ワクチンによって引き起こされた症状じゃないか」と決めつけ、怖いワクチンであるかのように間違った報道をしました。
そこで不安が広がり、あっという間に接種をためらう人が増えてしまったのです。
しかし、その後の厚生労働省の研究班の研究や、名古屋市の3万人の女子を分析した研究で、ワクチンをうっていない人も同じような症状を訴えていることがわかりました。
ただ、WHO(世界保健機関)は、HPVワクチンに限らず、ワクチン接種への不安や痛み、SNSなどでの不安を煽る発信によるストレスで症状が現れる「予防接種によるストレスに関する反応」があるとしています。
特に HPVワクチンの対象年齢である思春期の女性は、こうした症状が起こりやすいこともわかっています。
万が一、接種後に体調が悪くなった場合、各都道府県にその症状を専門的に診る協力医療機関が設けられています。症状とワクチンとの因果関係が否定できない場合は、国からの補償も受けられます。
ワクチンで得られるメリットと万が一のデメリットを天秤にかけて、それでも接種することが勧められています。
誰が無料で受けられるの?
公費で受けられる「定期接種」の対象者は、小学校6年生から高校1年生相当の学年の女子です。標準的な接種時期とされる中学1年生になるタイミングでお知らせを送る自治体も多いです。
国は2013年4月からこの学年の女子を定期接種の対象にしています。しかし、マスメディアが危険なワクチンであるかのように間違った報道をして不安が広がり、国は自治体が対象者にお知らせを送ることを9年近く止めていました。
この間、お知らせが届かず、自分が対象者であることも知らずに無料接種のチャンスを逃した人も多いのです。
この平成9〜17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)で接種を逃した女子に対して、厚労省は期限を区切って、無料接種の再チャンスを与えることを決めました。これを「キャッチアップ(追いつくための)接種」と言います。
HPVワクチンは半年で3回うつことが必要ですが、キャッチアップ接種の場合、今月31日までに1回目を接種すれば、後の2回も無料でうてます。
残りわずかな期間ですが、対象の方で、まだ接種していない人はぜひ検討してみてください。
検診を受けていればワクチンは必要ない?
子宮頸がん検診を受けていれば、ワクチンは必要ないのでしょうか?
子宮頸がんを防ぐには、20歳以上は2年に1回受けることが推奨されている子宮頸がん検診もとても重要です。
子宮頸がんは、HPVにセックスなどで感染し、それが長い間、子宮頸部に残り続けることで、細胞が壊れて発症します。検診の目的は、がんになる手前の前がん病変(異形成)の段階で見つけるのが目的で、細胞に異常が起きること自体を防ぐことはできません。
異形成は低度、中等度異形成、高度異形成の順に進みますが、「高度異形成」ぐらいまで進むと、がんになる前に子宮頸部の一部をくり抜く「円錐切除」やレーザーなどで手術をすることもあります。
この手術を受けた場合、早産や流産の率が上がる問題があります。また、病変やウイルスを全て取り除けなかった場合、再発する可能性も残ります。
ですから、子宮頸がんを防ぐためには、HPVワクチンと検診と、両方しっかり受けることが重要です。
逆にHPVワクチンをうってもすべてのがんを防げるわけではないので、20歳になったら必ず検診を定期的に受けましょう。
どこでうてる?参考になる情報は?
HPVワクチンは、小児科や内科、産婦人科で接種できます。
かかりつけ医の先生がいたら、まずそこで相談してみましょう。また、お住まいの自治体や保健所に「HPVワクチンについて相談したい」と伝えたら、窓口につないでくれるでしょう。
厚労省は、HPVワクチンについてわかりやすく説明したリーフレット(詳細版はこちら)を作っています。よくある質問に答える「HPVワクチンに関するQ&A」も参考にしてみてください。
民間団体では、医師たちがHPVワクチンに関する最新情報をわかりやすく発信している「みんパピ!」のウェブサイトがわかりやすいです。
私が以前働いていたBuzzFeedでもHPVワクチンに関する特集ページを作っていました。こちらも参考にしてみてください。
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