緊急避妊薬の薬局販売がスタート 薬剤師の役割拡大、どうすれば進む?
避妊の失敗や性暴力による意図しない妊娠を避けるために性交後に飲む「緊急避妊薬(アフターピル(※))」。
医師の処方なしでの薬局販売がついに2月2日からスタートする。
産婦人科医の団体などから根強い反対があり、実現に漕ぎ着けるまで長い時間がかかった。薬剤師の役割拡大を阻む壁は何なのか。安全性と患者の利便性を両立させるためには何が必要か。
薬局薬剤師の療養支援の仕組みを長年研究してきた、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻予防医療学分野特定教授の岡田浩さんに聞いた。
処方箋なしの緊急避妊薬の販売の議論に憤りを感じていたという岡田浩さん。
※性暴力や避妊の失敗などで意図しない妊娠の可能性がある場合、性交から72時間以内に服用すると、高い確率で妊娠を避けることができる薬。性交後、早く飲むほど、妊娠を防ぐ確率は高まる。
今回、薬局での販売が始まる緊急避妊薬「ノルレボ」錠
進まない議論に憤り 学習動画や研究で「薬剤師はできる」と発信
——岡田先生たちのグループが2020年に薬剤師向けの緊急避妊薬の学習動画を作ってから、5年以上経ちました。これだけ時間が必要だったのでしょうか?
僕は緊急避妊薬の専門家でもないし、当事者でもありません。そういう人間があまり口出しをするのは良くないですが、あまりにも経緯がひどかったので、誰も声をあげないのは許し難いと思ったんですね。薬剤師は医療の専門家として食べているのに誰の方を向いて仕事をしているのかと、珍しく憤りを感じたんです。
だから、薬剤師が緊急避妊薬について学ぶことのできる動画を作り、患者さんに何を聞くべきか書いた問診票や説明のための資材を作り、それを見る前と見た後では、自信や態度がどう変わるかを調査したんです。
——その結果を分析した論文「Preparation, Confidence, and Attitude to Sell Emergency Contraceptive Pills at Pharmacies: A Web Survey of Japanese Community Pharmacists(薬局における緊急避妊薬の販売に向けた準備、自信、姿勢:日本の薬局薬剤師を対象としたウェブ調査)」を読みました。動画を見る前は、多くの薬剤師が「問診票や説明資料の準備不足」「薬剤師の知識不足」を感じ、自信を持って対応できると答えたのは22.7%に留まりました。しかし、学習動画などで学んでからは、74.3%が薬局で販売できると自信を深めたという結果です。
初めてやることが怖いのは当たり前です。でもその知識を学ぶ研修や、患者さんに聞くべきことを書いた問診票や、説明すべきことを書いた資料など、必要なサポート体制がそろえば、実現可能じゃないかということを提示したかったのです。
——そのことを納得させ、準備を整えるにしても、こんな準備期間は必要だったのでしょうか?
僕は異常だと思います。日本は何事にも慎重な国なので、失敗を許しません。関係者が慎重になったのはわからないでもないですが、現実に困っている人がいっぱいいる中で、延々と実現を繰り延べることが良かったのか。僕は違うと思います。
医療者は人権を考えるべきです。特に女性は妊娠したかもしれない行為があった場合、男性側は何も怯えなくていいのに、一人で怯えることになる。それに対する解決策が広く世界中で使われているにもかかわらず、日本でだけ特定のリスクだけを大きく取り上げて繰り延べしていたことは、とても残念な気持ちになりますね。
むしろ声をあげない薬剤師に憤る
——憤りは、反対した産婦人科医の団体に対してなのか、その言葉に対して強く主張できなかった薬剤師の団体の方なのかどちらですか?
両方ですが、どちらがより強いかと言ったら薬剤師の側ですね。なぜそれに対して、「私たちはできる」と言えないのか。
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