高額療養費議連、「多数回該当の上限額は現行維持」「年度額の自己負担上限を決めること」を要請することを決定
高額療養費の見直しについて、超党派で議論する「高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟」は12月3日、5回目の総会を開き、7月の参議院選挙で落選した元参院議員の武見敬三氏に代わり、自民党の衆院議員、後藤茂之元厚生労働相を会長に選出した。
後藤氏は「高額療養費制度が将来にわたって持続可能なものとなり、またセーフティネット機能としての役割がしっかり果たせるように、しっかりと政府に対してもみんなで働きかけていきたい」と挨拶した。
また、多数回該当(※)の自己負担上限額について現行金額を維持することや、多数回該当に達しないまま上限スレスレの自己負担額を支払い続ける患者に配慮して、年度額の自己負担上限を決めることなどを求める政府への要請文を承認した。
※直近12ヶ月で3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降はさらに自己負担限度額が引き下げられる特例制度。
会長就任の挨拶をする後藤茂之氏(真ん中、撮影・岩永直子)
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多数回該当がリセットされる問題の改善を
前回6月17日の総会では、冒頭の会長挨拶後にメディアを退席を求めたため、筆者が「国民にとって重要な議論だからメディアにもオープンにしてほしい」と要望したが聞き入れられなかった。その後の検討によって、今回はメディアにフルオープンで議論された。
厚労省保険課長が現在の議論状況を報告した後、立憲民主党の長妻昭会長代行が、廃止や見直しの必要性が叫ばれている高齢者の外来特例について、「外来特例を利用している70歳以上はどういう疾病が多いのかさっぱりわからない。重篤ながんなどはどれぐらいの比率なのか、サンプル調査をぜひしていただきたい。エビデンスに基づいて議論しなければいけない」と意見を述べた。
自民党の福田かおる・衆院議員は、転職などで保険者が変わると多数回該当の適用要件となる制度利用のカウントがリセットされる問題に触れ、「長期療養になってしまうと、仕事が変わってしまったり、辞めざるを得なくなってしまったりして保険者が変わってしまうことがよくあると聞いている」と説明。保険者が変わったとしても、多数回該当のためのカウントが引き継がれる制度改定を求めた。
患者団体「年度額上限をぜひ入れて」
全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は、要請文について、年度額の上限はぜひ盛り込むことや低所得者への特段の配慮、外来特例の見直しについての慎重な議論を求めた。
また10月初めにステージ4の胆嚢がんと診断された轟浩美事務局長も発言した。
自身のがん患者体験を語りながら、高額療養費制度の重要性を訴える轟浩美さん(撮影・岩永直子)
「病がわかった時には、本当にもう立ち上がれないような状態だったのが、高額医薬品を投与することによって今ここにこうやって来ている。これが医療の進歩です。ただ、支払いをする時に、現行の制度をもってしても、限度額に至るまでの支払いの時に、もし私が子育ての世代だったら治療を諦めたんじゃないか(と考える)」と高額医薬品の使用で命を繋ぐ現状と、支払いの厳しさを説明。
また、「毎回、限度額にあともう少しで至らないことが永遠に続いてしまう人がいる。私もそういう月があった。だから、多数回該当に至らない人が現時点でもいるのだということを考えて、年度額上限についても丁寧に審議をいただきたい」と求めた。
日本難病・疾病団体協議会の大坪恵太事務局長も、年度額上限について要請文に入れたことについて感謝を伝え、外来特例の見直しについては受診抑制につながらないような施策を求めた。
議連の役員と患者団体代表の皆さん(撮影・岩永直子)
要請文は後藤会長に一任され、今週中にも高市早苗首相や上野賢一郎厚労相に提出される予定。
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