退職してフリーになります。そこで皆様にお願いがあります。

7月15日にBuzzFeed Japanを退職してフリーの記者になります。これからも医療記事を書き続けていくために、皆様にお願いがあります。
岩永直子 2023.07.01
誰でも

7月15日にBuzzFeed Japanを退職して、フリーの記者になることを決めました。2017年5月に読売新聞から転職して6年経ったタイミングで、エンターテイメント担当(芸能やSNSの話題担当)に異動になり「医療記事は書いてはならない」と会社から言い渡されたからです。

フリーになるにあたって新しいパソコンを買いました。まっさらな気持ちで再スタートを切ります。撮影:岩永直子

フリーになるにあたって新しいパソコンを買いました。まっさらな気持ちで再スタートを切ります。撮影:岩永直子

私は、先日全文を配信した『言葉はいのちを救えるか?』の「はじめに」に書いたように、大学時代に父の病をきっかけにホスピスでボランティアをし、そこでの経験をもとに医療記者を志しました。

ところが新聞社に入ってからは事件担当ばかりに配属されました。そこで成果を上げて希望する医療取材部門に配属してもらおうと頑張り、やっと10年後に医療担当になりました。

しかし、読売新聞の医療サイト「yomiDr.」の編集長になり、2016年にHPVワクチンの効果や安全性を発信する特集を組んだところ、会社にワクチンに反対する人からクレームが殺到しました。長崎大学の小児科教授、森内浩幸先生の寄稿が削除され、私は医療担当を外され、地方への異動を命じられました。医療取材をしたくて新聞社に入った私にとって、それはとてもつらいことでした。

自分が読者に届けるべきだと思う医療記事を書き続けるために、私は20年間勤めた読売新聞を辞めて、BuzzFeedに転職しました。

BuzzFeedでは本当にのびのびと自分の関心のあるテーマを取材し、書き続けることができていました。特にこの3年間のコロナ禍では、若手記者の協力もあって、新聞社やテレビ局などオールドメディアに負けない発信ができたと自負しています。

ところが、今年に入って経営方針が変わり、BuzzFeedのニュースチームを解散して、ハフポストと統合することになりました。我々ニュースチームの記者たちは、一人はハフポストに異動になったものの、残りはエンタメ部門(芸能界やSNSの話題)や広告記事部門などバラバラに異動となり、報道記事が書けなくなったのです。

芸能界やSNSの楽しい話題なども読者にとっては必要な情報で、軽んじるつもりはありません。しかし、20歳の時以来、亡き人から受け取った経験を生かそうと医療記者を目指してきた私にとって、自分の大切にしてきたものが奪われるようなショックを受けました。

ちょうど新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類に変更になったタイミングです。あれこれ書きたいことがあるのに、そしてこれまでの取材先から「取材しませんか?」とたくさん声をかけてもらうのに、何も書けないことが苦しく、悔しい日々を過ごしていました。

なんとか医療記事を書き続ける道はないかと、この2ヶ月間、各方面に相談し、ありがたいことに声もかけていただきました。そして、このニュースレターで医療記事を発信し始めることができました。バズフィードの仕事を終えた深夜や休日に医療記事を書き、私は再び息を吹き返したような気持ちになっています。

改めて医療記事を書いて生きていきたいという気持ちは強まり、私は退職を決めました。いくつか契約を結んでさまざまな媒体に書き始める予定ですが、BuzzFeedにいた時よりも収入が下がるのは確実です。イタリアンレストランでの接客バイトもできれば増やして、しばらくは貯金を切り崩しながら生活しなければならないでしょう。

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もちろんお金を出していただくだけの価値がある記事を書くべく、これまでに増して力を入れた取材をしますし、読みやすい原稿を心がけます。

サポートいただける方にはなるべく週 1 本以上のペースで配信します。過去の有料記事もウェブでいつでも読み返せるようになっています。不定期の公開取材・対談など新たなアイデアも試していきたいと考えています。

サポート額は自分のお好きな額を選べます。

少なくとも月 500 円以上の価値はお届けするつもりですが、最低額としては 400 円からとなっています。無理のない範囲で考えていただければ幸いです。

月額は最低額以上は読者さんが自由に設定することができ、いつでも変更・解約ができます。こちらのボタンから登録をお願いいたします。

報道部門を抱えるメディアはどこも経営状況が苦しく、我々報道記者の書く場所はどんどん狭められています。私もこの2ヶ月間、転職活動をしてきたのですが、正社員として迎え入れてくれる話を持ちかけてくれたのは報道とは違う形での仕事ばかりでした。どうしても報道記者を諦めきれない私はフリーになるしかないと腹を括りました。

何より記者生活25年が経ち、それなりに医療記者として実績を積んできたはずなのに、経営者の判断で簡単に書けない状態にされることに私は改めて衝撃を受けました。自分が人生を懸けて続けてきた仕事をこんなにも簡単に奪われてしまう。しかもこうした経験は2回目です。自分の命綱が他人に握られているような気がしました。もうそんな風に左右されたくないとも思いました。

私も今年50歳となるので、気力も体力も充実して書けるのはあとどれぐらいかと残り時間を考えるようになりました。もう時間を無駄にしたくないのです。

私の記事を少しでも読みたいと思ってくださる皆様、これからも書き続けることができるように、執筆活動を課金で支えていただけないでしょうか?

もちろんこれからも感染症対策など、全ての方に読んでいただきたい記事、貧困問題や困った方への支援を呼びかけるような記事については無料で配信いたします。それもサポートしていただける方がいるからこそ、無料で公開することができるのだと思います。

今後、有料記事としては、例えば先日可決・成立したゲノム医療法の意義や課題を伝えるために、遺伝性がんの患者さんや専門家に取材した記事をお届けします。取材の裏話や、フリーになってどんな苦労をしているかなど個人的な話もそこで発信いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

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