高額療養費制度、引き上げ幅が当初案の半分の政府案判明 患者団体は「更なる抑制を」と声明を公表
政府による高額療養費制度見直しの具体的な金額案が明らかになった。
複数のメディア(共同通信、朝日新聞など)によると、所得区分を細分化し、2027年夏までに自己負担の月額上限を7〜38%上げる。例えば「70歳未満で年収約650万〜750万円」の人は、自己負担の上限基準額が月額8万100円から11万4000円に引き上げられる。政府が昨年出した当初案では13万円8600だったので、引き上げ幅を約半分に抑えた形だ。
上野賢一郎厚労相と片山さつき財務相が24日協議し、正式に決定する。
これに対し、全国がん患者団体連合会(全がん連)と日本難病・疾病団体協議会(JPA)は24日朝、「高額療養費制度の見直しに関する共同声明」を出した。
一定の評価をしつつ、「月毎の限度額については十分に抑制されていない」として、更なる抑制の検討を求めている。
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患者団体「治療断念や生活破綻につながることがないように更なる抑制を」
政府案ではこのほか、長期間療養する患者の負担増を抑えるため、2026年8月から新たに「年間上限額」を設ける。例えば、「年収約370万~770万円」の所得区分では53万円とする。
患者団体の共同声明では、「多数回該当の据え置きと年間上限の新設により、長期にわたり継続して治療を受ける患者の年間での負担軽減を着実に実行」と、患者の要望によって長期療養患者の負担を抑える配慮がなされたことを評価。
一方で、「月毎の限度額については十分に抑制されていない」として、「仮に月毎の限度額を引き上げる場合でも、治療断念や生活破綻につながることがないように更なる抑制を検討すること」と、新たに示された案に対しても、さらに患者負担を抑えることを求めた。
特に、70歳未満の月毎の限度額については、「いわゆる現役世代が既に高い社会保険料を負担しているにも関わらず、『応能負担』に基づいて引き上げ金額が大きくなっている」と、現役世代への影響が大きいことを指摘し、「特段の配慮」を行うことを求めた。
今回の高額療養費制度の見直しは、医療制度全体の改革の中で進めることとなっているが、例えば風邪に対する抗菌薬処方など、無価値で害ももたらし得る無駄遣いの見直しはまだ示されていない。
こうした他の医療費節減についても、患者団体は、「高額療養費制度は我が国の公的保険医療制度の根幹を成し、『大きなリスク』に備える重要なセーフティネットであることから、医療費節減に資する他の代替手段について、優先かつ十分な検討を引き続き行うこと」を求めた。
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