埼玉県がHPVワクチンで訂正通知を発出 保健体育課長「誤った内容を通知してご迷惑をおかけした」
埼玉県が学校長に出したHPVワクチン(※)関連の通知で、ワクチンとの因果関係が証明されていない症状を「接種に関連したと思われる症状」と示していた問題。
埼玉県は7月5日付でこの通知を撤回し、訂正した通知を改めて出し直した。
訂正した通知では、ワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認されたとして、安全性を強調する文言が入れられている。
通知を出した埼玉県の荻原篤大・保健体育課長は「誤った内容を通知して、関係する皆様にご迷惑をおかけしたことについて大変申し訳なく思っている」と謝罪した。
訂正通知が出された
※子宮頸がんなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を防ぐワクチン。日本では2013年4月から小学校6年から高校1年相当の女性を対象に定期接種となったが、接種後に症状を訴える女子をメディアがセンセーショナルに報じたことから、国は積極的に勧めることを止め、接種率が激減した。2021年11月に安全性が確認されたとして積極的に勧めることが再開され、接種しそびれた女性に公費接種の再チャンスを与える「キャッチアップ接種」も今年度いっぱいまで行われている。
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問題の経緯
まず問題の経緯を振り返る。
問題となった通知は、HPVワクチンをうちそびれた人に再チャンスを与えるキャッチアップ接種や高校1年相当の女性への公費接種の期限を知らせるために、7月1日、埼玉県保健体育課長の名前で、県立高校学校長、特別支援学校長に出されたものだ。
その中で同課は、ワクチンとの因果関係が証明されていない「原因不明の慢性の疼痛症候群、関節痛、全身の激しい神経筋症状、痙攣、不随意運動、脱力などの運動障害、視野狭窄、記憶障害」などの多様な症状を、「HPVワクチンの接種に関連したと思われる症状」として紹介。
この症状が接種後に起こり得るとして、学校の教職員に適切に対応することを求める内容となっている。
これについては専門家からは「事実と異なるし、接種に影響を及ぼしかねない」として訂正を求める声が上がっていた。
新通知「HPVワクチンの安全性について特段の懸念は認められない」
同課は、埼玉県で性教育を熱心に行い、HPVワクチンの啓発にも携わっている産婦人科医、高橋幸子さんによる指摘や、記者の取材、報道を受けて、7月3日に訂正通知を出すことを決定。
高橋さんのチェックを受けながら文言を作成した。
新しく出し直された通知
新しい通知では、「(同県感染症対策課が)HPVワクチンの公費による接種が令和7年3月31日にに終了する対象者のうち、接種を希望する者が期間終了までに接種が受けられるよう、周知を求めています」として、学校長に対象者らへの周知を依頼。
「第72回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において、HPVワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められました」と安全性が確認されていることを説明した。
その上で、「HPVワクチンの積極的勧奨(※)を差し控えている状態については、終了させることが妥当とされました」と、積極的勧奨が再開された現状を伝えている。
※対象者に個別にお知らせを送って接種を促すこと。
ただし、接種後に気になる症状が出た際には、まず地域の医療機関を受診するよう伝えた上で、都道府県単位で治療の拠点となる「協力医療機関」も設置していることも紹介している。
WHOは2019年に「予防接種ストレス関連反応(ISRR)」という概念を提唱。ワクチンの成分のせいではなく、ワクチンに対する不安や社会の噂、報道などにより、人によっては接種後にこうした心身の症状が出ることを説明している。
保健体育課長「今後は根拠となる国の情報をしっかり確認する」
今回の騒動について、荻原篤大・保健体育課長はこう謝罪し、再発防止を誓った。
「今回誤った内容を通知して、関係する皆様にご迷惑をおかけしたことについて大変申し訳なく思っている。再発出する通知する通知に基づいて、正しい情報が周知されるよう努めていく。今後は当たり前ですが、根拠となる国の情報をしっかり確認し、通知発出の際には誤りのないよう対応して参りたい」
そして問題の通知が出た理由は「情報がアップデートされていなかったということです」として、単純な確認ミスであったことを明かした。
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